新生ラグビー日本に「ファンタジスタ山沢拓也」という希望 大敗イングランド戦で大歓声浴びる(永田洋光)
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年6月24日 9時26分
しかし、こと勝負に関してイングランドは、したたかだった。
粘り強い防御で日本のアタックをしのぐと、15分過ぎから巨漢揃いのFWが密集戦で圧力をかけて日本に攻撃のリズムを作らせず、前半だけで3対26と勝負を決めた。後半に入っても勢いは衰えず、3トライを追加して得点を45点まで積み上げる。
■個人で局面を打開できる才能の持ち主がいなければ
日本の反撃が始まったのは、そこからだった。
66分に途中出場のFL山本凱(この試合で初キャップ)が、防御をすり抜けて大きく突破。最後はWTB根塚洸雅がトライに仕上げる。3分後には、松田からのパスをお手玉しながら捕ったディアンズが抜け出して、サポートした途中出場のFB山沢拓也が独走トライを決めた。
象徴的なのは、この日のメンバー紹介で一番大きな喝采を浴びたのが、変幻自在なキックを操り、ランに秀でた山沢だったこと。山沢は、12年前の第一次エディ・ジャパンで高校生ながら代表に呼ばれたものの、ジェイミー・ジョセフ前HCのもとではあまり重用されず、試合前までわずか6キャップにとどまっていた。
ジョセフ前HCの指揮下、ハードワークで磨き抜かれた組織プレーを武器に、世界の背中に迫った日本代表に、もう一枚欠けていたのが、ストラクチャーと呼ばれるチームの約束ごとを超越できる、山沢のような"ファンタジスタ"だったのではないかーーそれが、ファンがこの間ひそかに抱いていた深層心理だったのである。
ジョーンズHCは、「チャンスを作り出すことはできたが、フィニッシュにはまだ課題が残る」と二期目の初戦を振り返ったが、得点シーンの起点は、いずれも個人が苦しい態勢から大きく突破したこと。大量リードのイングランドが少し集中力を欠いていたとはいえ、やはり個人で局面を打開できる才能の持ち主がいなければ、いくら可能性に満ちていても、超速ラグビーの実現は難しい。
そんな当たり前の事実を改めて日本に突きつけたのが、このイングランド戦だった。
(永田洋光/スポーツライター)
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