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「骨太の方針」は強気だが…気になる中小企業の賃上げ・人手不足倒産

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年6月25日 9時26分

「骨太の方針」は強気だが…気になる中小企業の賃上げ・人手不足倒産

人手不足による関連倒産が…(C)日刊ゲンダイ

「現在、デフレから完全に脱却し、成長型の経済を実現させる千載一遇の歴史的チャンスを迎えている~」と冒頭で始まる政府の経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)が閣議決定された。

 原案では33年ぶりの高水準の賃上げを実現したことから「所得増加」「賃上げ定着」を後押し、中堅・中小企業の活性化を強調するなど強気の文言が続く。しかし、春闘の歴史的な賃上げの一方で、気になるのは政府が期待するひとつ、中小企業の今後だ。

 前週、このコラムで報告したが、「2023年賃金構造基本統計調査」の企業規模別賃金では、大企業が前年比0.7%マイナスに対し中企業2.8%、小企業3.3%とそれぞれ同プラスだった。確かに中小企業の賃金は上がっているのだが、その内実は極めて厳しい。人手不足による関連倒産が増えてきているのである。

 中・小企業の賃金のプラスの伸びは、従業員の確保、引き留めで給与を上げざるを得ない状況にあるためだ。

■前年同期の2.1倍と大幅に増加

 東京商工リサーチが6月10日に発表した「2024年1-5月『人手不足』関連倒産の状況」がそれを裏付けている。倒産件数の累計は118件と前年同期の2.1倍と大幅に増加、調査を開始以来同期間最多で初めて100件を超えた。企業規模では小・零細企業(資本金1000万円未満)が約7割を占め、破産が102件と約9割を占めているのである。

「人手不足で受注を確保できず、営業の機会を逸し、業績回復の遅れから事業継続が困難になるケースが増えてきています」と言う同社情報本部担当者が続ける。

「人件費や原材料、エネルギー価格の上昇などのコストアップが相次ぎ、業績回復が遅れ、賃上げ原資を確保できない企業では従業員の退職引き留め、新たな人材確保が難しくなっているため『人材不足』関連倒産はしばらく増える可能性が高い」

 骨太の方針で何度も述べられている「賃上げの定着」だが、賃上げが継続される一方で、中小企業の倒産が進むことが危惧されるのだ。その結果、倒産を回避し事業存続のための大手によるM&A、中小企業同士の統合、合併で淘汰される企業が今後増える可能性も指摘される。それは中小企業にとって、今後賃上げを確保できる企業だけが生き残ることにもつながりかねない。

「骨太の方針」では、「来年以降、物価上昇を上回る賃上げを定着させていく」と、消費に直結する実質賃金のプラスへの期待を述べている。しかし、賃金と物価の好循環が進むことで豊かな生活への期待につながるのかどうか。中小企業の先行きは大きな懸念材料のひとつになりつつある。

(ジャーナリスト・木野活明)

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