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抗がん剤治療を受ける男性は子供を希望するなら精子バンクも考慮【Dr.中川 がんサバイバーの知恵】

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年6月29日 9時26分

抗がん剤治療を受ける男性は子供を希望するなら精子バンクも考慮【Dr.中川 がんサバイバーの知恵】

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

【Dr.中川 がんサバイバーの知恵】

 男女に共通する胃がん、大腸がん、肺がん、乳がんに加えて子宮頚がんを合わせて5大がんといいます。一般の方はがんというと、これらではないでしょうか。しかし、10代以下では白血病や生殖器のがんも多く、抗がん剤などの治療がうまくいっても、不妊になることが問題です。

 その状況を受けて大阪大などの日米共同研究チームは、がん治療を受ける男児の精巣を一部採取して長期保存する不妊治療の開発に着手。来年にも精巣バンクを始める計画が報じられました。

 iPS細胞から精子を取り囲む細胞を作り、人工的に精巣の環境を再現して精子に成熟させる技術で、マウスでは子供を産ませることに成功しています。しかし、ヒトで実用化するには10年以上かかるでしょう。

 精巣腫瘍を含む性腺腫瘍は20代でトップ、15~19歳のハイティーンで2位。確かに性腺腫瘍は多く、この年代の男性なら精通しているので、精巣を保存するより、精子保存が一般的です。精液の保存は比較的簡単で、精子バンクはすでに実用化されています。加齢による劣化も、卵子ほどではありません。

 がん治療による生殖器への影響や妊娠の可能性が問題となるのは、生殖器のがんよりも白血病の方が深刻です。19歳以下のがんでは、白血病がトップで、競泳の池江璃花子さんが白血病を発症したのも18歳でした。

 白血病は大きく4つのタイプに分かれ、そのうちの急性リンパ性白血病が8割。このタイプは、8割が完治するので治りやすいのですが、治療は抗がん剤がカギになります。精巣も卵巣も、その影響から不妊につながりやすいのです。精巣腫瘍でも、抗がん剤が不妊理由のトップになっています。

 その点を考えると、小児のがん治療では不妊対策が欠かせません。精通前の男児にとっては、精巣バンクの開発が待たれますが、前述した通り精通した男性なら精子バンクがあります。こちらをしっかりと活用するのが無難です。

 高齢化や晩婚化などがあいまって、50代や60代の男性が結婚して子供をもうけることは珍しくありません。その年代は、男性のがんが増えてくるタイミングでもあります。

 そのことに着目すると、中高年男性で抗がん剤治療を受ける方が子供を希望する場合は、精巣へのダメージを考慮しなければなりません。そうすると、小児と同じように事前に精子バンクを利用することが無難だと思います。高齢化が進む今、中高年にとっても、精子バンクは無視できない存在といえるでしょう。

(中川恵一/東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授)

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