1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

余命1年…家族の希望で本人には末期と悟られないように療養【老親・家族 在宅での看取り方】

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年7月3日 9時26分

余命1年…家族の希望で本人には末期と悟られないように療養【老親・家族 在宅での看取り方】

少しでも明るい気持ちになるように

【老親・家族 在宅での看取り方】#100

 病気や手術の後などでどの程度で回復するのか、それともしないのかなど、その見通しを指す言葉に「予後」という言葉があります。「予後が良い」といえば順調に回復していくことを意味し、「予後が悪い」場合は、後遺症が残るなど回復が危ぶまれる状態であり、時にお亡くなりになることを予測する場合もあります。

 予後や余命に関する情報は、患者さんやそのご家族にとって残された人生を有意義に過ごすための計画や、それを支えるための支援を行うのに大切な指針となるもの。私たちはそう捉え、患者さんやご家族に予後や余命を伝えるようにしています。余命に関しては具体的な数字は出さずに、「予後が近い」や「予後が短い」といった表現をするようにしています。

 ですが在宅医療の現場によっては、「予後が近い、短い」という表現ですら、患者さん本人の前では口にしないと初めから決めているご家族がいます。

 理由としては、「本人が自暴自棄になってしまうことを防ぐため」。そんな時、患者さんの性格やパーソナリティーを一番わかっているご家族だからこその選択だと捉え、ご家族の意見を尊重し、意向に従うことにしています。

 その患者さんは乳がんと多発骨転移により末期状態にある80歳の女性の方でした。食事はほとんど問題なくでき、痛み止めも子供や大人まで使えるごく一般的な薬カロナールで対処できていましたが、1カ月ほど前から食欲不振で病院を受診したのち一気に状態が崩れ、ご家族はその病院の医師から「余命は1年ほど」と告知されました。そこでご家族は、お看取りが近く医療依存度の高い方を多く診ている施設の入所を決断し、そこからの依頼を受け、当院が診療をさせていただくことになったのでした。

 ご本人は末期であることや予後の話などは聞かされておりません。施設の入所も、いったん状態を整えて家に帰るためと伝えているとのことで、そんな患者さんに対し私たちも診療中は、けっして末期であるとご本人には伝えず、少しでも明るい気持ちになるように努めたのでした。

 朝の全体ミーティングにおいては、スタッフ間でも認識を共有し、常に電子カルテを表示し確認するようにするなど、最大限の配慮を行い、療養に当たったのでした。

 このように在宅医療では治療面だけでなく、精神的な側面であっても、常に患者さんとご家族の生き方に寄り添い配慮するのはもちろんですが、その場合、なにが正解なのか、現場でいったん立ち止まり考え、自問自答しながら訪問診療を行うように努めているのです。

(下山祐人/あけぼの診療所院長)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください