東電が仮設トイレ大手を買収するも…再建計画が不透明で“ウン”まかせ?
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年7月4日 9時26分
![東電が仮設トイレ大手を買収するも…再建計画が不透明で“ウン”まかせ?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/gendainet/gendainet_1055390_0-small.jpg)
再建計画の進捗状況が思わしくない(C)日刊ゲンダイ
【経済ニュースの核心】
何とか「ウン」をつかみ取りたい──といった切実な思いの発露なのかも知れない。東京電力ホールディングス(HD)が仮設トイレの販売・レンタル会社の買収を決めた。
企業投資を専門に手掛ける子会社、東京電力タイムレスキャピタルと共同で、その運営ファンドを通じ名古屋市に本社を置く旭ハウス工業(社長・武陵守利氏)の発行済み全株を取得する。「収益源の多様化を図る」(関係者)のが狙いだ。
旭ハウス工業は1975年の設立。建設現場や野外イベント会場向けの仮設トイレに強く、事情通によると業界シェアはトップクラス。災害時のトイレレンタルにも注力しており、今年1月の能登半島地震でも供給役の一翼を担ったという。台風や地震などが頻発する中、東電HDはグループの防災関連ビジネスの拡大につながるとみて買収を決めた。
背景には東電HDが取り組んでいる再建計画「総合特別事業計画」の進捗状況が思わしくないこともある。福島第1原子力発電所の過酷事故を受けて2012年から始動させたものだが、事故の処理費用23.4兆円をひねり出すために打ち出した「稼ぐ力」の向上策が想定通りに進まない。
現行計画では国が立て替えた処理費用のうち除染と廃炉は全額、損害賠償費用は半分程度を東電HD自身が収益力の底上げを図って返済することになっている。このため30年度以降、4500億円規模の最終利益を確保するとしている。ただ実態は計画と大きな乖離が生じており、今年6月上旬からは東電HDと筆頭株主の原子力損害賠償・廃炉等支援機構との間で4回目の計画見直し論議が始まった。
しかし東電HDが1基当たり1100億円の収支改善効果があると見込む柏崎刈羽原発の再稼働は地元・新潟県の同意が得られておらず、現時点で道筋は見えないまま。
また他社との事業統合・再編や提携などを通じた収益力強化策の行方も不透明だ。19年には中部電力、日立製作所、東芝などと原発の共同事業化検討で基本合意したものの、交渉は「足踏み状態」(業界筋)から抜け出せない。
もはやウンに任せるしか術なし。買収劇からは何かしらそんな“におい”も漂ってくる。
(重道武司/経済ジャーナリスト)
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