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パリ五輪直前の国民議会解散「危険な賭け」に打って出た仏マクロン大統領に見る「スポーツ思考」(春日良一)

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年7月5日 9時26分

パリ五輪直前の国民議会解散「危険な賭け」に打って出た仏マクロン大統領に見る「スポーツ思考」(春日良一)

仏総選挙、支持者と話すマクロン仏大統領(C)ロイター

【7.26パリ大会開幕 徹底!実践五輪批判】#10

 フランスのマクロン大統領が突然、同国の国民議会解散を発表して世界に激震が走った。6月初旬に行われたEU議会選挙が極右政党の大勝利に終わった直後の決心に、「危険な賭け」との批判が正論に聞こえる。しかし、私はこの決断にマクロンの「スポーツ思考」を見た。スポーツ思考とは、私が提唱している「思考法」の名称であり、1998年から主筆しているメールマガジンのタイトルでもある。

 人が考えを巡らす時、物事を見極めじっくりと考える方法を取るのが通常である。しかし、瞬時に考えて行動に移るしかない場合もある。それはスポーツを行っている時に頻繁に現象する。例えば、サッカーで自分にパスが来て、これをどうしようかゆっくりと思考している時間はない。即座に判断してトラップをするなり、ダイレクトでパスを出すなりの決心が必要だ。あるいはピンポンを上手にラリーしているのに、突然ラケットを意識した瞬間に失敗することがある。無意識でコントロールされている行為が理にかなっていることになる。

 EU議会選挙の極右大勝利の強烈なシュートに対し、マクロンは瞬時に「これでいいのか?」と問うパンチングで逃れようとしたのだ。そのマクロンのパスをフランス国民はどうトラップするのか? 6月30日に行われた総選挙の第1回の投票結果は、右翼「国民連合」が推計得票率で3割を超え、マクロン率いる与党連合は3番手と苦戦。現時点でマクロンの「賭け」が失敗に終わり、極右政権誕生の危険性を唱える論評が主流だ。

 しかし、そうとも言い切れない。今回の選挙では過半数に達していない候補者が多数いて、第2回の決選投票が行われることになる。そして、今回の投票率は約67%と高い数字を示している。それはマクロンのパスにフランス国民が呼応した結果とも取れる。決選投票となると極右化を望まない人々がさらに真剣になる可能性が高い。

 そして間近に迫るパリオリンピックがマクロンのサポーターとなる。マクロンいわく「国民はオリンピック、パラリンピックを準備してきた当人を求めており、全く準備ができていない人々は求めていない」。確かに国民連合が主張する国粋主義、地球環境政策、移民対策などは、オリンピックの目指すダイバーシティー、クライメートポジティブ、難民選手団編成などのアンチテーゼである。

 果たして7月7日に行われる決選投票の結果はいかに。それはフランス国民が「民主主義と共和国の価値のもとに結集する」(マクロン)ことができるかを問うばかりでなく、オリンピックがどれだけフランスに支持されているかを示すことにもなるだろう。

(春日良一/五輪アナリスト)

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