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桂米朝師匠は上方落語の古典として演じられている演目の数多くを掘り起こした(本多正識)

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年7月6日 9時26分

桂米朝師匠は上方落語の古典として演じられている演目の数多くを掘り起こした(本多正識)

桂米朝さん(C)共同通信社

【お笑い界 偉人・奇人・変人伝】#199

 桂米朝師匠の巻

  ◇  ◇  ◇

 先日、亡くなられた桂ざこばさんが「ちゃーちゃん」と慕い、敬愛し続けた桂米朝師匠。今回はお笑いの世界で仕事をする者として、また、いち落語ファンとして米朝師匠の存在がどれほど上方落語に貢献されてきたか、お話しさせていただけたらと思います。

 米朝師匠は人間国宝に指定されたことはもちろん、演芸人で初めて文化勲章を受章し、文字通りの上方落語存亡の機を救った大功労者です。私も漫才作家を始めて四十有余年間に特番などで数回ご一緒させていただきました。番組の構成とともに漫才の台本を書いているとお伝えすると「また、難しいことしてるんやな~。頑張りなはれや」と、米朝師匠から励ましの言葉を頂いたことが今でも忘れられません。

 師匠は、上方落語界の復興、底上げ、若手の育成と幅広く功績を残されました。中でも、やり手がいなくなり埋没していた古い噺を「現代語訳」して、演目に復活させてきたことは落語ファンとしては見逃せません。現在、上方落語の古典として演じられている演目の数多くが米朝師匠が掘り起こしたものや、再構成されたものだと聞いています。

 読書家でも知られた師匠。書庫には、1万冊を超える蔵書が並び、落語関連、歌舞伎や古典芸能、原語のままの中国の笑い話など、研究者としても一級品の資料を数多く所有されていたそうで、米朝師匠の博識の源になっていたようです。

 高座で語られた噺はもちろん、米朝師匠の所作も丁寧で正確。たとえば、棚から物を上げ下ろしする時も、高さはいつも一定であったり、実際にはない物があたかも存在するかのように緻密な表現をされていました。これから落語界を背負う若手噺家だけのお手本でなく、NSC養成所の生徒たちにも「ぜひ、動画を見て所作を学ぶように」と伝えています。

 お弟子さんのざこばさん、枝雀さんらが、米朝師匠のコピーになることなく、自由に形を変えて演じてこられたのも「桂米朝」というしっかりとしたお手本があったからこそだと思っています。

 こんな話もありました。その頭の良さ、こまやかな気遣いがお気に入りだったハイヒールのリンゴちゃんと楽屋で米朝師匠が話をしているときに「三枝師匠(現.6代文枝)がご挨拶に来られました」とお弟子さんから声がかかると、

「今、リンゴと話してるから後にしてくれるように伝えといて」

 慌てたリンゴちゃんが「(米朝)師匠あきませんて! 私が怒られますから」「かまへんがな、先客なんやさかい」と笑われたとか。リンゴちゃんはすぐにその場を失礼したそうですが、こういう気さくな一面も持っておられたことを聞くと、どこかホッとする米朝ファンの私なのです。

(本多正識/漫才作家)

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