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悪名高い「人質司法」を訴えた角川歴彦KADOKAWA元会長の勇気(元木昌彦)

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年7月7日 9時26分

悪名高い「人質司法」を訴えた角川歴彦KADOKAWA元会長の勇気(元木昌彦)

車椅子で東京拘置所を出る角川歴彦KADOKAWA元会長(C)日刊ゲンダイ

【週刊誌からみた「ニッポンの後退」】

 多くの冤罪を生み出してきた元凶「人質司法」は検察による“犯罪”といっていい。

 最近では、生物兵器の製造に転用可能な噴霧乾燥機を経産省の許可をとらずに輸出したとして化学機械メーカー「大川原化工機」の幹部3人が逮捕されたケースがあった。否認する3人を11カ月もの間勾留し続け、そのうちの一人相嶋静夫は深刻な胃がんで外部の病院で治療することを訴えたが、保釈請求は却下され、その後亡くなってしまった。享年72。しかも、これが違法捜査だったことが判明、検察は起訴を取り下げたのである。

 その前には、金融商品取引法違反容疑で逮捕された日産自動車前会長カルロス・ゴーンが、108日間身柄を拘束され“シャバに出た”後、人質司法を痛烈に批判したことで国際的な関心が集まった。だが、ゴーンが海外に逃亡してしまったことで、残念ながらそれ以上には広がらなかった。

■この国の刑事司法は世界最低レベル

 この国の検察や警察は、いったん逮捕すると「推定無罪」や憲法で保障されている「基本的人権」など無視して、弁護士も立ち会いさせず孤立させ、長時間の尋問を強要。狭い部屋に押し込め24時間監視しながら、自白を迫るのである。弁護士立ち会いを認めていない国は北朝鮮と中国だけだそうだ。この国の刑事司法は世界最低レベルということだ。

 相手が高齢でも深刻な病気持ちでも容赦はしない。保釈申請を何度出しても、検察のいいなりの裁判所はこれを認めない。追い詰められ精根尽き果てた被疑者は、検察側の作文である自白調書に押印を押してしまう。なかには失意の末に拘置所内で死を選ぶ者もいる。

 最近は取り調べの可視化が義務付けられるようになったから、そんなバカなことは行われないという声がある。だが、可視化を義務付けているのは裁判員裁判対象事件などで2~3%程度だといわれる。それに検察はビデオの“改ざん”などお手の物である。

 だが、ようやくここへきて、人質司法は憲法に違反した人権侵害であると国を相手取り、訴訟を起こした男がいる。出版社KADOKAWA元会長の角川歴彦(80)である。

 角川は東京五輪のスポンサー選定を巡って五輪組織委の高橋治之に賄賂を渡した容疑で逮捕されたが、過酷な取り調べにも屈せず容疑を否認し続けた。重い心臓の病があり何度も倒れたが、保釈が認められたのは226日後だった。

 角川は週刊文春(7月4日号)で、何とか出られないかと拘置所の医務室で漏らした時、医者から「死なないとここから出られません」と吐き捨てるようにいわれたという。

 保釈後、代理人の弘中惇一郎弁護士から「これまで人質司法そのものを争う裁判はなかったけれど、戦いますか」と聞かれ、即座にやると答えた。贈収賄容疑に関しては別で争う。

 そうそうたる弁護団を組織し、人質司法が憲法や国際人権法に照らしてどれほど人権を侵害しているかを問う、わが国初の国を相手取った訴訟である。根腐れしているこの国の刑事司法を根底から変える裁判になるかもしれない。

 角川はこの問題を長年放置してきたメディアの責任も問う。

「人質司法は、強大な力を持つ検察が主導しながら警察・検察・拘置所・裁判所・メディアが一体となって維持されている『システム』なのだ」

 人質司法の維持に一役買ってきたメディアは恥を知るがいい。(文中敬称略)

(元木昌彦/「週刊現代」「フライデー」元編集長)

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