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投資家に転身したマネックス創業者が「しまむら」に株主提案の波紋(有森隆)

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年7月10日 9時26分

投資家に転身したマネックス創業者が「しまむら」に株主提案の波紋(有森隆)

物言う株主?(マネックスグループ会長の松本大氏)/(C)共同通信社

【企業深層研究】しまむら(上)

 低価格衣料チェーンのしまむら(東証プライム上場)は5月17日、さいたま市内で定時株主総会を開いた。マネックス系投資ファンドのマネックス・アクティビスト・マザーファンド(MAMF)が提出した株主提案は、賛成比率が13.4%にとどまり否決された。MAMFは株主資本配当率(DOE)が5%以上とする配当方針を定款に盛り込むことを求めた。

 会社側は4月、同提案に反対の意向を表明。MAMFは、しまむらの内部留保は預金水準が高く、資本効率が悪化する可能性があることを問題視した。

 しまむらは4月1日、2027年2月期までの3年間の中期経営計画を発表した。DOE3%程度、配当性向35%程度をめざす。24年2月期までDOEで2%程度、配当性向で25%程度を掲げていたのを、目標を引き上げる。株主への利益配分を手厚くする。

 中計ではDOE3%程度の目標を掲げていたが、これはMAMFからの5%を下限とする配当方針を定款に盛り込む株主提案の水準を下回る。

 しまむらは株主提案への反対理由について「成長投資が必要な経営局面であることや株主還元など資本政策の機動性と柔軟性が失われる」とした。

 MAMFを率いるのはマネックス創業者の松本大。投資家に転身して、初の株主提案として注目されていた。

 ネット証券3位のマネックスグループは23年6月に開催した定時株主総会で清明祐子・共同最高経営責任者(CEO)が社長CEOに昇格し、創業者の松本は会長。初のトップ交代だった。

 マネックスはネット証券の黎明期の1999年にゴールドマン・サックス証券出身の松本が立ち上げた。M&A(合併・買収)を駆使し、業容を拡大。18年、暗号資産(仮想通貨)の流出事件で混乱したコインチェックを買い取り、いったんはボロ儲けしたが、今や足を引っ張る重荷になった。暗号資産事業の業績は低迷している。

 マネックスグループとNTTドコモは23年10月、資本業務提携した。共同出資で持ち株会社を設立し、傘下にマネックス証券を置く。共同出資の持ち株会社、ドコモマネックスホールディングスの株式はドコモが議決権ベースで49%、マネックスが51%持っている。ドコモは、今回の株式取得に485億円を投下。ドコモが取締役の過半数を指名する。

 ドコモとマネックスグループの資本業務提携の実態は「ドコモによるマネックスの救済」(インターネット証券大手の役員)。ドコモにとっては遅れていた金融・証券部門を強化するという意味がある。

 松本は投資活動に軸足を移した。19年に立ち上げたMAMFは、経営者とのエンゲージメント(愛社精神)を通じた経営改善をうたっている。個人的なつながりを生かした投資ファンドを目指す。

 批判合戦もいとわないと評される旧村上ファンドとは異なり、穏健派のアクティビストファンドとして存在感を発揮したいというわけだ。

 ところが今年に入ってから、「物言う株主」の姿勢を鮮明にした。3月、しまむらに株主提案したのを皮切りに、大日本印刷、住友電設に株主提案を行った。大日本印刷に対しては、資本効率を高めるための増配や自社株買いではなく、社外取締役の選任にまで踏み込んだ。

 松本は第2の村上ファンドになるのか。松本の初めての株主提案を退けたしまむらの経営の現状を解明することにする。 =敬称略 (つづく)

(有森隆/経済ジャーナリスト)

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