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妊婦には使えなかった降圧剤が最近になってOKになった理由【クスリ社会を正しく暮らす】

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年7月10日 9時26分

妊婦には使えなかった降圧剤が最近になってOKになった理由【クスリ社会を正しく暮らす】

えっ、飲んでも大丈夫なの?

【クスリ社会を正しく暮らす】

「妊娠しているのですが、この薬は飲んでも大丈夫ですか?」

 薬剤師として病院に勤務していると、医師や患者さんからとてもよく聞かれる質問です。一番心配なのは、医薬品による催奇形性や先天異常など胎児への影響についてでしょう。

 医薬品による胎児への影響として、サリドマイドが非常に有名です。サリドマイドは1950年代末から60年代初めに、世界の十数カ国で鎮静・催眠薬として販売されました。この薬を妊娠初期に服用すると、胎児に奇形を起こすことが後に判明します。サリドマイドの催奇形性により、世界で数千~1万人、日本においても約1000人の胎児が被害にあったと推定されています。

 現在は、新たに医薬品を販売するまでに厳しい試験が行われます。動物における胎仔毒性などが十分に調査されたうえで、発売となるのです。ただ、古い時代に実施された試験の中には、おかしなものを見かけることもあります。

 たとえば、高血圧治療でよく用いられているCa拮抗薬の「ニフェジピン」という薬がそれにあたります。ラット及びマウスの器官形成期における実験で、「ラットでは1日25㎎/㎏以上、マウスでは50㎎/㎏以上の経口投与により胎仔の奇形・死亡及び発育遅延などの変化が認められている」と掲載されているのです。

 マウスでの50㎎/㎏以上の経口投与という数字は、50キロのヒトでは2500㎎相当の投与となります。このニフェジピンは、通常、高血圧の治療では20~40㎎程度の用量で使われます。2500㎎も服用したら、血圧が下がりすぎて瀕死の状態となってしまうのが容易に想像できるのです。そんな状態で、胎仔の正常な発育は望めないのは当然といえるでしょう。

 そうしたおかしな点が考慮されたのか、2022年12月、ニフェジピンの妊婦への投与禁忌が削除となりました。治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合には、妊婦や妊娠している可能性のある女性への投与が可能となったのです。高血圧の妊婦さんに使用できる降圧薬は非常に少なく、選択肢が増えるのは非常にありがたいことです。

(荒川隆之/薬剤師)

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