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「ものにときめいて刺激を受けられるなんて今のうちよ!」83歳の女性患者からのアドバイス【老親・家族 在宅での看取り方】

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年7月10日 9時26分

「ものにときめいて刺激を受けられるなんて今のうちよ!」83歳の女性患者からのアドバイス【老親・家族 在宅での看取り方】

ときめく心を大切にしているのよ

【老親・家族 在宅での看取り方】#101

 訪問診療の現場ではたびたび人生の先輩方からアドバイスをいただきます。

「私なんてもう切り干し大根みたいになっちゃった! 時間の流れはあっという間よ~。ものにときめいて刺激を受けられるなんて若いうちにしかできないんだから、今を大切にしなさい!」

 先日はこんなお言葉を。

 83歳の女性患者さんで、心房細動を患っている方です。この病気は、心臓の中にある心房という部位に異常な電気信号が起こることで、不整脈やそれにともなう息切れや倦怠感などの症状が出ます。

 血圧を低くする薬を内服しており、たまに薬の効果が強く出過ぎて血圧が低くなり、めまいを起こすことがあります。どのタイミングで、どの薬を、どの程度飲むべきかを気にかけていて、そのたびに相談の電話をいただいていました。

 ある日などは、「今日は大学病院に検査を受けに行く日。今は血圧が低いから薬を飲んだらめまいがする可能性があるけど、逆に移動して血圧が高くなる可能性もあるし、不安に思っている。だけど大学の先生にはなかなかじっくり相談できない」と、通院する前に当院に電話をいただいたこともありました。その時は具体的な血圧の数値を出しながら、基本的にご自身でご判断していただいて、不安な時は中止して大丈夫だとお伝えしました。

 ご自分の思いを常日頃から私たちに伝えてくださる患者さんで、いつもご自宅に伺うと、おしゃべりに花が咲きます。とても明るい性格で、「体が動くうちは積極的に治療を受けたい。動かなくなったら安らかに自然に逝きたい」など今後のシビアな治療方針なども実にフランクにお話ししていただいています。特におっしゃっていることは「痛いのも苦しいのもいや」「薬を飲むことで生じるめまいもしんどい」。そして、人生についてのお話でした。

「私の旦那はかなり年上で、若いときから旦那の姑や家族の介護をしないといけなかったの。子供も生まれたら子育てで忙しいでしょ~! 子供たちが巣立って落ち着いたのは最近よ。だから、旅行とかは若くて体が動いてドキドキする感情があるうちにしておきなさい! 私は日頃から刺激を受けようと、ときめく心を大切にしているの! 思い立ったが吉日ってのは本当よ」

 私はふと「年を取れば取るほど、抽象的・全般的認識など単なる概念だけが残り、その間に経過した年月は消えうせ、全生涯が想像を絶するほど短く思われる」と、ドイツの哲学者ショーペンハウアーが著書「幸福について」の中で述べている、老年期に時間が早く感じる仕組みを分析した一節を思い出したのでした。

 人にはそれぞれいろんな人生がある。生活の中に入り込みさまざまな生き方や考え方に触れる。そんな出会いもまた、訪問診療の魅力だと思っています。

(下山祐人/あけぼの診療所院長)

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