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「セーヌ川」は「お台場」と同じ過ちを犯すのか…どちらも下水道流入による水質問題(春日良一)

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年7月19日 9時26分

「セーヌ川」は「お台場」と同じ過ちを犯すのか…どちらも下水道流入による水質問題(春日良一)

セーヌ川に飛び込むスポーツ大臣(本人のXから)

【7.26パリ大会開幕 徹底!実践五輪批判】#12

 1900年に開催されたパリ五輪で競泳はセーヌ川で行われたが、1923年以降は水質汚染によりセーヌ川での遊泳が禁止され、1924年のパリ五輪では屋外プールが会場となった。

 セーヌ川が“母なる川”であるフランス人は3度目のパリ五輪で「泳げるセーヌ川」をどうしても実現させたいようだ。開会式の舞台であるだけでなく、マラソンスイミングとトライアスロンの会場である。競技実施のためには水質検査をパスして、最終的に当該国際競技連盟に承認を得なければならない。

 14億ユーロ(約2400億円)をかけたというセーヌ川の水質改善の目玉は、上流浄水場の整備とともに約5万立方メートルの雨水をためることのできる巨大貯水施設。大雨が降ると下水の一部をセーヌ川に流す仕組みの欠陥を補うものだ。この施設は5月に竣工し、稼働を始めたが、近年まれに見る豪雨のせいか定期検査では水質に合格が出ていなかった。それならとパリ市長のアンヌ・イダルゴは「私が泳いでみせる」と見えを切っていたが、その日はなかなかやってこなかった。

 ところが、7月に入ってからの12日間はほぼ水質基準を満たしている、と市当局が発表。翌日、スポーツ大臣のアメリー・ウデアカステラはパラリンピック仏選手団旗手の大役を果たすトライアスロン選手のアレクシ・アンキャンカンとともにセーヌ川を泳いでしまった。

 宿敵に先を越された形のイダルゴだが、市当局の発表には詳細がない。大事なことは、「泳いでみせる」ことを競うより、水質検査の具体的な数字でセーヌ川の懸念をクリアすることだろう。

 折しもネットフリックスが「セーヌ川の水面の下に」という映画を配信した。環境汚染の影響でサメがセーヌ川に侵入、主人公の環境活動家が市長に諫言するも、セーヌ川で行われるトライアスロンのイベント成功を思う市長は「対策は十分」と強行。果たしてその結末は? 配信初週に93カ国でTOP10入りした映画だが、まさにパリ五輪開会1週間前のこの時期、セーヌ川問題への警鐘に響く。

■「巨大な世界規模の下水道」

 思い起こせば東京五輪2020、同様のことが起きていた。「泳げるお台場」にすべくマラソンスイミングとトライアスロンの会場としたが、下水道施設の改善という根本的な対策を取らず、「水中スクリーン」や「神津島の砂」といった対症療法で応じた。今、お台場海浜公園は遊泳禁止である。

 パリ五輪後にセーヌ川が泳げる川になっているかどうか、それがパリ五輪を評価する重大な視点となるだろう。イダルゴは昨年11月にX(旧ツイッター)を退会した。「Xは憎悪や偽情報を広め民主主義を破壊する『巨大な世界規模の下水道』と化している」と批判して。イダルゴは本気でパリの「下水道」に取り組むべきだ。

(春日良一/五輪アナリスト)

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