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「がん治癒率」…知る人と知らない人で大きな違いが生まれる【Dr.中川 がんサバイバーの知恵】

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年7月20日 9時26分

「がん治癒率」…知る人と知らない人で大きな違いが生まれる【Dr.中川 がんサバイバーの知恵】

写真はイメージ

【Dr.中川 がんサバイバーの知恵】

 オリンパスは、40~60代の男女1万4100人を対象にがん検診の受診状況や受診・非受診の理由などについて調査。その結果を「胃・大腸がん検診と内視鏡に関する意識調査白書2024」にまとめ、今月8日に発表しています。

 注目点がいくつかある中、見逃せないのは正しい知識の定着率の低さです。胃がんと大腸がんを早期発見して早期治療すると、その治癒率はどちらも98%と100%近い。ほぼ治るのが現実ですが、その治癒率を「90%以上」「60~90%未満」「30~60%未満」「30%未満」の4択で選んでもらうと、「90%以上」はわずか3割未満。

 この調査は21年にも行われ、当時と比べて「60%未満」の選択率は10ポイント前後増えていました。がんは種類によっては治る時代ですが、治らないと思っている人が少なくない現実を示しています。

 その誤解が均一に広がっているかというと、そうではありません。がん検診を受けた人と受けていない人の意識の違いに表れています。検診受診者は、胃がんでも大腸がんでも「自覚症状がなくても定期的に受けるべきだと思う」が7割超でしたが、受けなかった人で「自覚症状なしで受けるべき」は2割ほど。一方、「検診対象年齢であったことを知らなかった」は、受診者にはほとんどいませんが、受けなかった人では2割ほどです。

 受診意識の明確な違いは、肺がんや子宮頚がん、乳がんでも同様で、検診受診者は早期発見・早期治療による治癒効果を理解することで、受診行動に結びついていることがうかがえます。受診しない人ほど、いまだに“がんは不治の病”と誤解している可能性があるかもしれません。われわれ医師はがんの治療効果についてもっと積極的な発信が必要といえます。

 国が掲げるがん検診の指針としては、胃がんは「バリウムか胃カメラ」で、大腸がんは「便潜血検査」です。必ずしも内視鏡検査を受けられるわけではなく、一般の方はバリウムや便潜血検査の精度に疑問を持ち、受診を拒否するのかもしれません。

 確かに胃がん検診では胃カメラがベターですが、大腸がん検診における検便の精度も決して悪くありません。検便は2日分を採取するのが基本。正しく3年続けて6日分を採取すると、大腸がんの発見率は理論上97%と、ほぼ100%です。

「正しく」と記したのは便を満遍なくこすり取ることと、もうひとつは管理と持ち運びです。採取後は冷蔵庫に保管し、いまのように暑い時季は保冷剤と一緒に持ち運ぶこと。

 暑いと、潜血反応があっても、細菌に分解されるのです。ですから毎年の検便を基本に、大腸カメラは5年に1度受けるとよいでしょう。大腸がんの死亡数を激減させた米国でも、大腸カメラは10年に1回です。

 私の義妹は恥ずかしがって検便も大腸カメラも受けずに、進行した大腸がんで亡くなりました。今回の調査結果でも39%は「(大腸カメラは)意外と恥ずかしくなかった」と回答していますから、とにかく一度受けてみて習慣化することが大事だと思います。

(中川恵一/東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授)

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