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新がん治療で注目「放射性リガンド療法」の威力…細胞の内外から放射線を照射

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年7月23日 9時26分

新がん治療で注目「放射性リガンド療法」の威力…細胞の内外から放射線を照射

薬を投与し、体内のがん細胞の内外から放射線照射

 新たながん治療が注目を集めている。「放射性リガンド療法」だ。近畿大学医学部放射線医学教室の細野眞教授に聞いた。

「放射性リガンド療法、これは核医学療法と同じ意味ですが、簡単に言うと、ピンポイントの放射線治療です」(細野教授=以下同)

 放射線治療は多くの人が名前を耳にしたことがあるだろう。がんの三大治療の一つで、放射線を体の外から照射し、がんを縮小・消失させる。放射線治療には従来の放射線(X線)、陽子線、重粒子線などがある。

■薬を投与し、体内のがん細胞の内外から放射線を照射

 放射性リガンド療法は、「放射線をがん細胞へ照射」という点は放射線治療と同じだが、体の外から照射するのではない。

「放射線を放出する物質『放射性同位元素』を含む薬を放射性医薬品といいます。この放射性医薬品を静脈注射などで投与すると、放射性医薬品が血液に乗ってがん細胞に到達し結合する。そしてがん細胞の外から、あるいは細胞内に取り込まれた後、その内側で放射線照射となるのです。放射性リガンド療法は放射線治療であり、また薬物療法でもあると言えます」

「リガンド」とは、「結合するもの」という意味。放射性医薬品ががん細胞に到達するのは、もちろん偶然ではない。「A」というがんがあるとすると、「がんA」に集まる特定の化合物がある。その化合物を人工的に作り(がん標的分子「リガンド」)、キレート剤という低分子薬剤によって、放射性同位元素と強固に結合させる。つまり、リガンドと放射性同位元素(&キレート剤)で成り立つ薬が、放射性リガンド療法で用いられる放射性医薬品(放射性リガンド)となる。

「がんA」には「リガンドA」を、「がんB」には「リガンドB」を、というようにリガンドを変化させれば、さまざまな種類のがんに対応できる可能性がある。

■散らばったがんにも有効

「放射性リガンド療法は、放射線照射でがんを縮小・消失させる『治療』だけではなく、『診断』にも使えます。放射性同位元素には診断用のものもあり、診断用とリガンドを結合させた放射性医薬品を投与すれば、がんの場所に集まるので、どこにがんがあるかがわかります」

 診断用放射性リガンドで標的の場所を確認した後、続いて治療用放射性リガンドで治療を行うこともできる。

「放射性リガンド療法が従来の放射線治療と異なる点は他にもあります。放射性医薬品が確実にがんに到達・結合できていることを画像検査で追跡できる。さらに、従来の放射線治療では体内に散らばったがんには適していませんが、放射性リガンド療法は目に見えないがんも含めて、体内に散らばったがん全てを標的にできます」

 日本では現在、5つの治療用放射性医薬品が承認。神経内分泌腫瘍(がんの一種)などに放射性リガンド療法が保険適用で行われているが、放射線治療病室の不足など課題がいくつかあり、十分に行われている状況ではない。ただ、臨床試験も実施されており、今後は実施件数の増加が見込まれている。

  ◇  ◇  ◇

■放射性リガンドががんを攻撃する流れ

 放射性リガンド(放射性医薬品)を投与→放射性リガンドが標的のがんに集まりくっつく→標的がんへ放射線照射→がん細胞死滅

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