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ドラマは降ろされ、役所辞めろと言われ…窓辺に腰掛け、月を見ながら「俺は情けねえな」と呟いた(石田純一)

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年7月24日 9時26分

ドラマは降ろされ、役所辞めろと言われ…窓辺に腰掛け、月を見ながら「俺は情けねえな」と呟いた(石田純一)

石田純一(C)日刊ゲンダイ

【石田純一 70歳のダンディズム】#25

 石田純一が2024年2月から日刊ゲンダイで連載を続けている「70歳のダンディズム」。都立青山高校に通っていた青年時代から早大商学部に進学、米国留学を経て、「演劇集団 円」から俳優の道に進んだ半生をご本人の口から語っている。さらに最初の結婚相手の星川まりさんと長男のいしだ壱成(49)のこと、古希を迎えてからの体のメンテナンス、昨年開いた「炭火焼肉 ジュンチャン」、現在の妻の理子さん(48)と3人の子どものこと……とプライベートな話題も包み隠さずしていくれて“石田らしさ全開”の連載となっている。連載25回目の今回は田原俊彦(63)の“事件”について。

  ◇  ◇  ◇

 ぽつぽつと仕事は増えているのに、モヤモヤする。何か迷いがあって集中できない。1980年代の後半はそんな悩みを抱えていた。確か、87年だったと思うが、田原俊彦さんの「ドラマ特番」に呼ばれた。その時、ちょっと風邪気味だったが、それほどでもないので、衣装合わせを済ませ、撮影現場に入った。すると、監督がいきなり、「こいつ、ちょっと、あんまりよくないから代えよう」と言い出し、降ろされてしまった。

 これは正直、ショックだった。衣装合わせまでして降ろされるなんて、ふつうではあり得ないからだ。やはり、自分の中の集中力の欠落が見抜かれていたのだろうか?

 ますますモヤモヤしているところに、忘れもしない87年の9月30日である。所属していた事務所、スカイコーポレーションの本間社長に呼び出されたのである。

■「役者を辞めて、マネジャーになりなよ」

 やり手の女社長で、事務所を立ち上げた時は建築家のご主人がいたが、その後、別れて、暴走族ブラックエンペラーを率いていた異色俳優、本間優二と再婚したことは以前、書いた。さすがに週刊誌ネタになったが、そんなことは気にしない豪快やり手社長である。ただし、ズケズケものを言う。初対面の時も顔を見るなり、「三浦友和のNGみたいな男はダメなのよね~」とケチョンケチョンだった。当時のご主人がとりなし、なんとか事務所に置いてもらったのだが、その本間社長が僕を呼び出すと、こう切り出してきたのである。

「あなた、やっぱり、俳優には向いてないよ」

 言葉も出ないままうつむいていると、「役者を辞めて、マネジャーになりなよ。みんな、あなたのこと好きだって言うし。映画のプロデュースもできるし。そしたら、いずれウチの社長をやってもらうから。どう?」と畳みかけてくる。

 こんな時は頭が真っ白になってしまう。とはいえ、口をついて出てきたのはこんなセリフだ。

「1年だけ待ってもらえませんか? 確かにこのところ、仕事に集中していないこともありました。あと1年、死ぬ気でやってみますから。どうか、もう1年、待ってもらえませんか? で、来年の9月30日、ダメだったらすっぱり辞めますからお願いします」

 本間社長は渋々OKしてくれた。その夜、アパートに帰ると、月が出ていた。ふだんは月など気にも留めないが、その月のことは覚えている。満月だったとか、美しかったからではない。窓辺に腰掛け、月を見ながら、つくづく「俺は情けねえな」と思ったのだ。月に向かって独り言を言う。月しか相手にしてくれない。こういう時の月は便利なものだ。

 とはいえ、あと1年と約束してしまった。もう一度、死に物狂いでやるしかない。そう心に誓った。転機が訪れたのは翌年の夏である。(つづく)

(石田純一/俳優)

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