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あんな真っ白なところに行ったら調子悪くなる…90代独居男性は受診を断固拒否【老親・家族 在宅での看取り方】

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年7月24日 9時26分

あんな真っ白なところに行ったら調子悪くなる…90代独居男性は受診を断固拒否【老親・家族 在宅での看取り方】

高齢の患者さんは病院に行くことを拒否する方も少なくない

【老親・家族 在宅での看取り方】#103

「病院に行きたがらなくて困っています。そちらで診てくれませんか」

 7月のある暑い日のことでした。新宿区内にある地域包括支援センターからそんな連絡が我々の診療所に届きました。

 連絡をいただきさっそく訪問診療に向かったのは、脱水症状があるにもかかわらず、夏の暑い日中なのに冷房をつけないまま、病院の受診を拒否する、90代の独居男性の自宅でした。

 高齢の患者さんは時に病院を毛嫌いし、病院に行く必要があったとしても拒否をする方が少なくありません。

 多少の痛さや体のしんどさがあっても、さしあたって生活できないほどに深刻な状況でない限りは、人との関わりを疎むあまりに医療機関での受診を避ける人もいらっしゃいます。その理由も患者さんの置かれた環境や考え方によりさまざまです。

 この男性の場合は「お金がもったいない……、もうこのままでよい、あんな真っ白なところ(病院)に行ったらかえって調子悪くなる」といった金銭的理由と精神的なストレスを避けたいといった理由のようでした。

 それでも病院で診てもらった方が、いまある病状も楽になるし、医療費の心配も各種手続きをすれば適切に、安価もしくは無料になる──。そう丁寧に、自治体のケースワーカーさんが説明をしたのですが、病院に行くことをかたくなに拒否していたため、対応に困っていたということでした。

 在宅医療を始められる患者さんの多くは、たいがい大きな病院からの退院支援を受け、病院と在宅医療機関との連携により、退院し自宅に戻り在宅医療を開始します。その際それまで入院していた病院から、その患者さんの病歴や検査歴などが載っている診療情報提供書をいただいています。

 そのため自宅に帰っても、病院で行われていた医療処置を、できるだけ患者さんの要望を取り入れながらもスムーズに行うことが、訪問診療では可能となっています。

 しかし、この患者さんは、これまで必要最低限のことでしか病院との関わりがなく、病気の診断も受けていないために、診療情報提供書はありませんでした。それでも急を要するため、手探りしながらの診察とはなりましたが、点滴をつなげたり冷房をつけるなどの基本的なアドバイスをしたり、患者さんの訪問診察を開始したのでした。

 幸い訪問診療を気に入ってくださったのか、いまではこの患者さんは我々とも打ち解け、時にご家族の話や昔の思い出などをうかがいながら、ゆったりとクーラーの効いた涼しく快適なご自宅で、穏やかに診察を受けていただけるようになりました。

 この患者さんのように、自己主張の強い病院嫌いな患者さんの方が、むしろ患者さんの考え方や生き方を尊重し寄り添いながら診療を行う、在宅医療が向いている。そんなことを考えた暑い夏の日でした。

(下山祐人/あけぼの診療所院長)

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