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シャープは「さすが鴻海流」からの転落…液晶なきあとのブランドイメージとは(真保紀一郎)

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年7月25日 9時26分

シャープは「さすが鴻海流」からの転落…液晶なきあとのブランドイメージとは(真保紀一郎)

郭台銘氏(C)日刊ゲンダイ

【企業深層研究】シャープ(下)

 21世紀の入り口から2008年のリーマン・ショックまでの間、電機業界でもっとも輝いていたのはシャープだった。他社に先駆け液晶テレビへのシフトを果たしたことで業績を大きく伸ばすことに成功した。国内経済の低迷と円高のダブルパンチで苦しんでいた電機業界で、シャープは数少ない勝ち組だった。

 ところがシャープに成功をもたらした液晶事業が、その後シャープを追い込んでいったのだから皮肉なものだ。

 きっかけは、今年9月に液晶生産撤退を決めた堺の液晶工場(SDP)の建設だった。09年に誕生したSDPは、世界最大級の液晶パネルを生産できる能力があり、テレビサイズが大型化する中、液晶市場をリードすると思われていた。

 しかし完成直前の08年にリーマン・ショックが起きて世界経済は失速、テレビ市場も冷え込んだ。加えて進む円高と、サムスンなど韓国・中国製の台頭もあり、シャープの液晶パネルは国際競争力を失っていく。

 結果、SDPの稼働率は上がらない。それがシャープの経営を直撃し、13年3月期には5000億円を超える最終赤字に陥る。その後も赤字体質からは脱却できず、16年3月期にシャープは債務超過となった。その危機を救ったのが台湾の鴻海(郭台銘会長、当時)だった。

 鴻海はシャープを子会社化するとともに副総裁の戴正呉氏を社長として派遣する。この戴社長は徹底した無駄の排除と素早い意思決定を軸に再建を進め、16年度下期には早くも営業黒字に転換させる。「さすが鴻海流」。電機業界の誰もが戴社長の手腕に舌を巻いた。

 ところが戴氏は最後でミスを犯す。2年前に社長の座を呉柏勲氏に譲るが、その直前、8割の株を売却していたSDPを買い戻したのだ。その意思決定には社内外から疑問の声が上がったが、戴氏は「将来のシャープに必ずよい決断になる」と押し切った。

 それから2年、案の定、SDPはシャープのお荷物になった。

 シャープは鴻海傘下で再建を果たした。しかしそれは無駄を排除した結果でしかない。液晶や半導体などの最先端デバイスの技術は日進月歩。競争力を保つには莫大な研究開発費を投じることが必要だ。しかし再建途上のシャープにその余裕はなく、完成当時は世界最先端だったSDPも陳腐化し、赤字を垂れ流すだけになっていた。SDPが液晶生産の撤退に追い込まれたのも、ある意味当然の帰結だった。

 今後SDPは、その敷地をAIデータセンターとして活用するという。こうしてアセットライトを進める一方で、シャープはブランド事業に集中するという。

 6月に新社長に就任した沖津雅浩氏は社員に向けたメッセージで「強いブランド企業“SHARP”の確立」という言葉を使っている。

 しかしこれまでシャープのブランドを支えてきたのは、液晶であり、その液晶を使った「AQUOS」だった。液晶なきあと、どのようにしてブランドイメージを高めていくのか。何を経営の柱と置くのか。現段階ではあまりに不透明だ。

(真保紀一郎/経済ジャーナリスト)

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