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真夏前に知っておくべき「性感染症」(3)潜在的な患者数は梅毒を上回る「アメーバ赤痢症」

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年7月25日 9時26分

真夏前に知っておくべき「性感染症」(3)潜在的な患者数は梅毒を上回る「アメーバ赤痢症」

先進国では性行為での感染が増えている

「アメーバ赤痢症」と呼ばれる病気をご存じか? 肛門をなめることでアメーバ赤痢原虫に感染する性感染症で、医師が診察したら全例報告の対象となっている5類感染症のひとつだ。消化管に寄生している病原体が糞便中に排出され、口を経由して再び腸や肝臓などにとりついてさまざまな症状を引き起こす。

 性感染症専門医療機関「プライベートケアクリニック東京」の尾上泰彦院長が言う。

「発展途上国では汚染された食べ物を口にすることで感染することの多い病気ですが、衛生環境が維持されている先進国ではむしろ性行為での感染が増えています。潜伏期間は2~4週間で、典型的な症状は下痢、高熱、しぶり便、それに排便時の下腹部痛など大腸炎の症状を繰り返します。診断の決め手は、イチゴ状の粘血便です。トイレットペーパーに血がつくため痔と間違える患者さんもいます」

 アメーバ赤痢原虫は血液を介して他の臓器に侵入することもあり、その多くは肝臓に現れる肝膿瘍のような症状を来す。

「具体的には38度以上の高熱、肝臓の痛み、吐き気、寝汗などです。アメーバ赤痢症は大腸炎と肝膿瘍が合併することが多いこともわかっています。ただし、症状が軽いため見逃されることも多く、治療の遅れで亡くなるケースもあります。治療は内服薬が第1選択で比較的簡単ですが、アメーバ赤痢は通常の大腸炎ときちんと鑑別して治療することが重要です。抗原虫薬を使わずにステロイドを使うと腸管穿孔が起きることもあります」

 世界人口の10%が持つとされるアメーバ赤痢原虫には2種類あり、大腸炎や肝膿瘍の症状をもたらす病原種が90%、非病原種が10%と言われている。

「日本で流行しているのは病原種ですので、要注意です。以前は肛門をなめたり、肛門性交、口腔性交を行う男性同性愛者(MSM)の間の流行でしたが、いまは男女間でも風俗店などを中心に同様な性行為が行われ、増加しているとみられています」

 国立感染症研究所が今年7月16日公表の感染症発生動向調査週報(IDWR)2024年第27週(7月1~7日)によると、年初からの新規感染者報告数は272人で、前年同期の255人を上回っている。

「しかし、これは氷山の一角で、実際の患者数は昨年約1.5万人の新規患者数が報告された梅毒を上回るとの見方もあります。性感染症検査場の保存血清を調べた2020年報告の研究では、その時点で梅毒陽性率(2.11%)よりアメーバ赤痢症陽性率(2.64%)が高かったのです。なお、2014~17年の新規感染者数は年間1000例を超えたが2018年以降は大きく減少したとされていますが、これは検査試薬が製造中止になったためで、真の減少ではなく、その脅威は年々増しているとみられています」

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