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自己保身に一辺倒の日本体操協会の対応に、パワハラや体罰を生み出す日本スポーツ界の土壌を見た(春日良一)

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年7月26日 9時26分

自己保身に一辺倒の日本体操協会の対応に、パワハラや体罰を生み出す日本スポーツ界の土壌を見た(春日良一)

会見で頭を下げる体育協会幹部ら(C)日刊ゲンダイ

【7.26パリ大会開幕 徹底!実践五輪批判】#13

 パリ五輪開幕がもうすぐそこだというのに「日本代表選手を辞退する」という事件が起きた。

 体操女子のエース宮田笙子選手(19)の五輪参加辞退である。喫煙と飲酒の発覚がその理由とあって、「厳しすぎる」「仕方がない」と巷の議論は宮田選手の行動規範抵触と五輪辞退の比重に終始している。しかし、この一報を聞いた時、私には今回の問題の本質は別のところにある気がした。代表選手団派遣業務に長く携わった肌感覚がそう思わせた。

 それは、去る7月19日に日本体操協会が開いた緊急記者会見の録画を見て確信となった。

 冒頭、協会幹部は揃って深々と頭を下げ世間に謝罪した。そして、同会長は話し合いの結果、宮田選手が辞退を申し出る結果になったとし、「この案件は本人だけの責任ではなく、協会全体の責任、宮田さんへ寄り添っていく」と語ったのである。選手を思う懐の深いリーダーの言葉に聞こえるが、体操協会としてどのように責任を取るのかについての言及は一切なかった。そもそも選手を思う協会ならば、モナコ合宿中の宮田選手を日本に呼び戻す前に自らが現地に飛ぶだろう。

 そこには、何年経っても変わらないスポーツ界の悪しき構造が透けて見える。世間を騒がせる問題が起きた時に、まず考えるのが現体制維持である。誰も責任を取らず、しかし、巷間「仕方ない」と思える空気を醸成する。選手に厳しい裁きを下した悪代官になりたくないが、自らを裁くことも回避したい。結果、最も立場の弱い者に事実上の責任を取らせることになる。そして、選手が辞退したのだから「仕方がない」とし、協会は選手に寄り添っていくと善人を演ずる。事情説明に臨んだ協会専務理事は「話し合い」の中身を一切語らなかった。しかし、メディアもそれ以上非情になれず、説明責任を追及することもなかった。

 これが、日本スポーツ界のパワハラや体罰を生み出す土壌でもある。果たして競技団体にとって重要なのは選手なのか役員なのか? 国際オリンピック委員会(IOC)が「アスリートファースト」を叫ぶのは、「選手第一主義」を貫けば、スポーツ界の体質を劇的に改善できるからだ。日本スポーツ界の体育会気質をただす特効薬だ。

■事なかれ主義

 今回の一件、選手第一主義であればどうなるか? 協会が決めた「日本代表チームとしての活動の場所においては、20歳以上であっても原則的に喫煙、飲酒を禁止」という行動規範に抵触したのだから、協会の倫理規程による処分をするしかない。処分は「永久追放、登録抹消、資格停止、戒告、その他必要に応じた処分」となっている。

 その処分を示されず、幹部に呼ばれて「話し合い」の席についた選手が問い詰められれば、その答えは「辞退」しかない。逆に協会が責任を持っていずれかの処分を選ぶことこそアスリートファーストになる。なぜならその処分に対して選手は自らのこれからを自分自身で決めることができるからだ。

 今回の「辞退」は自発的な決断の余地はなく、協会が下した「処分」でもない。事なかれ主義だ。選手だけに罪を負わせる協会の責任を改めて問う。

(春日良一/五輪アナリスト)

  ◇  ◇  ◇

 宮田は体操協会に対し、喫煙や飲酒は「各1度だけ」と話したというが、体操協会はとっくの昔から宮田の「違法行為」を把握していた可能性が浮上している。いったいどういうことか。

●関連記事【もっと読む】…では、それらについて詳しく報じている。

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