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がん最新治療 「陽子線」はピンポイントの攻撃力が強み

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年7月30日 9時26分

がん最新治療 「陽子線」はピンポイントの攻撃力が強み

陽子線は働きながらの治療も可能(C)日刊ゲンダイ

 6月から陽子線治療の保険適用の対象が拡大した。該当するがん患者にとっては、高額だった陽子線治療が保険適用で受けられることとなり福音だ。ただ、陽子線治療といってもピンとこないかもしれない。がんが縁遠い病気とは言えない現代、がん治療の選択肢として、その存在はぜひとも知っておくべきだ。中部国際医療センター陽子線がん治療センター施設長を務める不破信和医師に聞いた。

  ◇  ◇  ◇

 放射線治療専門医である不破医師は愛知県がんセンター副院長を経て、2007年、民間初の陽子線治療施設として開設した南東北がん陽子線治療センター長に就任。兵庫県立粒子線医療センター院長(12年)、伊勢赤十字病院放射線治療科部長(15年)を歴任し、21年から現職に就く。

 臨床試験や先進医療として行われていた陽子線治療が一部のがんで保険適用となったのが18年。それより前から陽子線治療に取り組んでいた不破医師は、まさに陽子線治療のスペシャリストと言える。

 ここで読者の中には、「放射線」「陽子線」の言葉に戸惑った人もいるだろう。

「放射線治療は、体の外側や内側から放射線をがんに向けて複数回照射し、がんの縮小・消失を狙う治療。放射線には種類があり、放射線治療の一種として陽子線治療があります」

 漫画「ドラゴンボール」を見たことがある人は、必殺技「かめはめ波」を思い浮かべてみてほしい。「かめはめ波」をがんに向けて放ち、敵を攻撃する。これが放射線治療だ。

 従来の放射線治療ではX線やガンマ線という光子線が用いられてきた。ただ、これらのピークは皮膚から1~2センチほどの深さで、そこから先は線量が低下し続ける。「かめはめ波」で言えば、敵より手前の障害物は力強くなぎ倒せても、敵に届いた時にはパワーが落ちていて十分に倒せない可能性がある。

■放射線より効果が高く副作用が少ない

「一方、陽子線治療では、水素の原子核である陽子を加速しエネルギーを高めてできる陽子線を照射します。がんの深さや形状に合わせて、どこで最大のエネルギーを放出するか、どこで照射が止まるかを設定できるため、がんに線量を最大限にあてられ、かつ正常組織や臓器へのダメージは最小限に抑えられます」

「かめはめ波」が、敵の前後左右の障害物にはダメージを与えず、敵のみを最大限のパワーで攻撃するイメージだ。陽子線治療は従来の放射線治療と比べて効果は高く、副作用は小さい。

 陽子線治療が保険適用で受けられるがんは、今年6月から可能となった肺がんをはじめ複数あるが、「手術による根治的な治療が困難な場合」など、陽子線保険適用に条件がついているものがほとんどだ。

「陽子線を含む放射線治療は、手術や抗がん剤と並ぶがんの三大治療です。手術ができ、それが最良の手段なら手術を最初に行うべきです。しかし、がんの転移があり手術が不可能な場合、陽子線治療が役立つ。また、舌がんのように手術によって話す、食べる、味わうといった生きる上で重要な機能を失いかねないがんもある。その場合、手術が可能でも陽子線治療と動脈から抗がん剤を投与する療法との併用で切らずに治す方法は、一つの手だと思います」

 また、小児がん(限局性の固形悪性腫瘍)では、抗がん剤によって終了後数カ月から数年後に合併症が生じる晩期合併症が出現しかねない。従来の放射線治療(X線)では脊椎骨の成長障害(低身長、側弯、変形など)が必発だ。それらのリスク回避においても、がんをピンポイントで治療できる陽子線治療は優れている。

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