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認知症の予防リハビリで“頭”を使った訓練は有効なのか?【正解のリハビリ、最善の介護】

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年7月31日 9時26分

認知症の予防リハビリで“頭”を使った訓練は有効なのか?【正解のリハビリ、最善の介護】

ねりま健育会病院の酒向正春院長(C)日刊ゲンダイ

【正解のリハビリ、最善の介護】#39

 ねりま健育会病院の「介護老人保健施設(老健)」では、認知症ではなくても高齢者の「認知機能向上リハビリ」を実施しています。前回は、認知症の発症を遅らせるために取り組む①「予防リハ」のうち、筋力トレーニングについてお話ししました。

 予防リハでは筋力トレーニング以外にもさまざまな訓練を行います。認知症を予防するためには、体を使う=筋力と体力を向上させるだけでなく、頭を使う=学習することが重要です。

 手の親指と他の指を交互に合わせたり離したりする親指体操などの手指訓練、積み木を使って立体を作る立体形合わせパズル、塗り絵や絵を描くなどの創作活動、簡単な四則計算や100マス計算(縦横に10個ずつ、マスのある左列と上列にそれぞれ0~9の数字が1つずつ書かれていて、それが交差するマスで足し算、引き算、掛け算、割り算をする計算トレーニング法)、文章を読んでから出題される質問に答える訓練など、さまざまなリハビリを行います。

 また、歌を歌ったり楽器を演奏したり、音楽を鑑賞する音楽療法もあります。いずれも、脳に適度な刺激を与えて脳活動を増やし、脳を活性化させるのです。

 ただ、こうした頭を使うリハビリを実施する際は、注意しなければならないポイントがいくつかあります。まずはそれぞれの患者さんに合わせ、その患者さんが7割ほどは成功できるくらいの難易度のトレーニングを選ばなければいけません。簡単すぎると飽きて続きませんし、ほとんど成功しないくらい難しいと負の感情が湧いてやる気を失ってしまいます。

 また、決して無理強いをしてはいけません。患者さん自身に能動的に取り組んでもらうことが大切で、成功したときは褒めたり感心するなど共感しながら、患者さんが前向きな気持ちを保てるようにサポートします。本人が嫌がるトレーニングを無理にやらせて、“拷問”になってしまわないように注意しなければならないのです。

■脳への刺激とコミュニケーションが重要

 さらに、常にコミュニケーションをとることも重要です。予防リハに取り組んでいる最中も積極的に声をかけ、やる気を引き出したり、達成感を感じてもらったりして、脳に快適な刺激を与えることが認知機能の低下を防ぐことにつながります。

 そうした頭を使う予防リハの“さじ加減”は、OT(作業療法士)やST(言語聴覚士)といった専門家が中心になって担当します。前回お話しした筋力トレーニングを担当するPT(理学療法士)も含め、リハビリチームの力量が大切です。前回の筋力トレーニングで体を動かして体力を向上させ、今回の頭を使ったトレーニングで脳に刺激を与えて活性化し、周囲と積極的にコミュニケーションを図ることが認知症の予防につながります。ですから、まだ働ける年齢や健康状態、生活環境にある患者さんは、仕事を続けることが一番の“認知症予防リハ”になります。超高齢になっても、可能な範囲で仕事は辞めないで継続しましょう。

 毎日の通勤はしっかり体に負荷がかかって体力の維持を図れますし、仕事に必要な情報や作業のために新しく学習したり、職場の同僚や仕事相手とコミュニケーションを図るので、脳に刺激が加わるからです。

 もちろん、年齢や健康状態で仕事を続けられない方でも、コミュニケーションを基盤にした予防リハをしっかり行えば、認知症の発症を遅らせることができますし、そのために当院は取り組んでいます。すなわち、筋力、体力、バランス、柔軟性(関節可動域)を強化する身体リハと、コミュニケーションや新しい出会いを核にした認知機能向上リハが認知症予防リハの両輪になるのです。

(酒向正春/ねりま健育会病院院長)

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