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「玄関ドアの郵便受けに新聞がたまっている」は重要な情報【老親・家族 在宅での看取り方】

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年7月31日 9時26分

「玄関ドアの郵便受けに新聞がたまっている」は重要な情報【老親・家族 在宅での看取り方】

在宅医療は社会のセーフティネットとしての役割を担っている(C)日刊ゲンダイ

【老親・家族 在宅での看取り方】#104

 新人スタッフが入ると、必ず教えることのひとつが「患者さんの自宅を訪れる際は、さまざまなことに目をむけるように」です。ADL(日常生活動作)のレベルが、生活環境から見て取れるからです。それは時に、言葉のやりとりを上回ることもあります。

 例えば、新聞や健康飲料など訪問販売で届けられたものの状態があります。玄関ドアの郵便受けにたまっていたり、玄関で散乱している場合、その商品の日付や食品の状態を確認します。すると「〇カ月前から動けなくなったのか」などがわかります。

 SDH(Social Determinants of Health)という言葉があります。日本語では「健康の社会的決定要因」と訳されますが、要するに病気の根源には社会的な背景があり、それらを探り改善することは、健康増幅に寄与するという考え方です。

 私たち在宅医療スタッフは、このSDHの考えに基づき、患者さんの生活に深く入り込み、患者さんの健康や社会的生活を支えています。患者さん側からもその機能を求められています。

 しかし、患者さんの状況はさまざまです。ある患者さんは、自宅はあるものの水回りは使えず、ゴミの処分もできず荒れた生活をしており、日中は外に出て、髪の毛もひげも伸びきってホームレスと間違えられることがたびたびあるという方でした。

 この患者さんの場合、この荒れた生活から脱出しなければ病気の根本的な改善は厳しいだろうという判断に至りました。

 そしてその状況を脱するために、「なぜ」そのような状況に陥っているのか、「どのように」すればそこから脱することができるのかを考えながら診察することを心がけたのです。

 ただ日々の診察で「ちょっとそろそろ部屋を片付けましょうよ」などと促すだけでは、全く物事は動きません。その時その時に具体的な解決策を提案することが重要です。

 自治体によっては、患者さんの状況を変えるために役立つ制度があり、私たちが手続きのサポートをすることもあります。ある一定の要介護が認められていたら、伸びきったひげや髪の毛を無料で切ってくれる出張床屋サービスなどもあります。そのようなサービスや、その他の制度などがあるということをあらかじめ知っているだけでも対処の仕方が異なります。

 このように診療する臨床の現場で、患者さんの生活全般を意識しながら提案するということは、病院で働いている医師とはまた違ったある種の生活アドバイザーとしての能力や知識が求められています。今後ますますその傾向は強まっていくことだと考えます。

 社会のセーフティーネットとしての役割を担う在宅医療。どこまで患者さんに寄り添う訪問診療を行えるかで、社会への貢献度が大きく変わる。そんな意識を常に念頭に置き、診察するようにしています。

(下山祐人/あけぼの診療所院長)

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