志の輔に弟子入りも「人間同士だから、波長が合わないことがある。そういう場合は辞めてもらうよ」【立川晴の輔 大いに語る】
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年8月1日 9時26分
立川春の輔(C)日刊ゲンダイ
【立川晴の輔 大いに語る】#3
東京農業大学の落研に入部した晴の輔は、落語を聴きまくった。
「中でも一番衝撃的だったのが、師匠、志の輔の落語でした。味わったことのない没入感で、この人の弟子になりたいと思いました。卒業するまでその決心が変わらなかったら弟子入り志願しようと」
卒業後も変わらなかったので、志の輔の門をたたいた。
「1997年当時、師匠には弟子がいなかった。お会いした時に、『10人目だよ』と言われて、それまで9人が弟子入りしてやめていたのがわかったんです。師匠がおっしゃるには、『人間同士だから、波長が合わないことがある。そういう場合はやめてもらうよ』と。運転免許を持ってたので、その日に事務所の車のキーを渡され、運転を任されました」
志の輔は前座時代、談志付きの運転手をしていた時期がある。
「当時の師匠の上をいかないといけないと思いました。幸い、学生時代に弁当の宅配のアルバイトをやってて、師匠のご自宅から仕事場までのエリアと宅配のエリアが重なっていたので、道に迷うことはなかったですね。初めて走る経路は、前夜に一度バイクで走って、確認してました」
志の吉という芸名を付けてもらったが、立川流は寄席での修業がない。6年の前座生活のうち、弟弟子に引き継ぐまで4年間、師匠にべったり付いていた。
「師匠は故郷の富山県を大変大事になさってます。当時は県内の全市町村で会を開いてました。参議院の富山全県区から立候補するんじゃないかと思ったくらい、くまなく回ってました。落語会は都内だけでなく、地方に広げていくやり方もあることを学びました」
晴の輔が二つ目時代から地方都市で落語会を続けているのは、志の輔を手本にしたことなのだ。
「落語会の楽屋で噺の稽古をつけてもらえましたし、運転中、師匠が電話でいろんな方と交わす会話を聞いてると勉強になります。できればまた運転手をして、今の師匠からあらたなことを学びたいです」 (つづく)
(聞き手・吉川潮)
▽立川晴の輔(たてかわ・はれのすけ) 落語立川流・立川志の輔一門。1972年11月21日兵庫県神戸市生まれ。岡山県作陽高校、東京農業大学農学部卒。97年、立川志の輔に入門。志の吉を拝名。2003年、二つ目に昇進。08年、東西若手落語家コンペティション・グランドチャンピオン。13年、真打ちに昇進。志の吉から晴の輔へ改名。
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