足の切断を余儀なくされ…位置はどのように決まるのか?【日本版「足病医」が足のトラブル解決】
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年8月1日 9時26分
テニスをもう一度楽しみたい…
【日本版「足病医」が足のトラブル解決】#29
「足の切断が必要と告げられたのですが、できるだけ残したくて……」
この60代の男性は、15年ほど前に糖尿病を発症し、神経障害や血管障害といった糖尿病の合併症による足壊疽でかかりつけの医師から切断を余儀なくされたとのことです。
糖尿病による足壊疽や、悪性腫瘍などで足の切断を控える患者さんの中には、「いびつな形でも構わないから切断範囲をなるべく小さくしたい」と訴える方が少なくありません。けれども、足は「歩く」機能を果たしてこそ存在する意味を持ちます。少しでも足を広く残そうとしてかかとの位置で切断すると、義足が十分にフィットしにくく、装着したとしても足全体に荷重をかけられずスムーズな歩行が難しい。足の機能性が失われると同時に、QOL(生活の質)の低下を招くので、患者さんによっては血行障害や感染の範囲がかかとまでにとどまっていたとしても、下肢での切断が選択されるケースもあるのです。
切断する位置は、主に義足がしっかりとはまり、体重を支えられる膝下約15センチで行われます。ただし、義足を装着しても手術後にリハビリを続けられなければ、再び歩くことはできません。手術前に、術後のリハビリができるか、義足を装着して歩けるほどの筋力があるか、体力や筋力の評価を行い、最終的に切断部位を決めています。
ある60代の男性は、かかとにできた傷が治らないと受診した近所の皮膚科で、糖尿病による難治性潰瘍と診断されたといいます。日が経つにつれ、傷口周辺の痛みが強くなり歩くのがしんどいと当院を受診。傷口から組織を採取して生検を行ったところ、難治性潰瘍ではなく扁平上皮がんであると判明しました。幸い、転移は確認されず、切断部位を検討するために術後の生活について希望を尋ねたところ、「趣味のテニスをもう一度楽しみたい」と話され、膝下15センチで切断を行いました。
術後はリハビリに熱心に取り組まれた甲斐もあり、約1年で手術前と同じスピードで歩けるようになり、3年後にはテニスを再開して現在は障害者テニスの大会にも出場されていると話されていました。
この方のように、切断後の生活スタイルに合わせて切断する部位をあえて広く設定することが、ご自身のQOLの維持につながる場合もあります。
(田中里佳/順天堂医院足の疾患センター長)
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