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夏の抗がん剤治療は免疫低下による「食中毒」に注意する【Dr.中川 がんサバイバーの知恵】

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年8月3日 9時26分

夏の抗がん剤治療は免疫低下による「食中毒」に注意する【Dr.中川 がんサバイバーの知恵】

食事は火の通ったものをすぐに!

【Dr.中川 がんサバイバーの知恵】

 容赦ない暑さが続いています。地域によっては午前中から体温を超えるような気温に達し、午後は40度を超えた地域もあるそうです。これほどの暑さだと、猛暑によって健康被害を受ける方は少なくありません。熱中症対策は必須です。

 医学誌ランセット・プラネタリー・ヘルスは今年2月、興味深い論文を掲載しました。世界707都市における1969年から2020年に死亡した約1億3000万人のデータを用い、今後の気候変動が世界の死亡者数に与える影響を分析しています。

 その結果、年間平均気温が1.35度、2.73度、4.26度、5.55度上昇すると仮定した4つの気候変動シナリオをもとに解析すると、日本のような温帯地域では、暑い時季の死亡率が増加。寒い季節の死亡率は減少することが分かりました。日本の死亡数は冬に多く、論文は寒い季節の死亡率は高い水準を維持するとしていますが、温暖化の進展によっては状況が変わるかもしれません。

 夏に涼しく暮らすことは命の問題で、熱中症対策は不可欠です。それはがん患者も同じ。もうひとつ、酷暑に抗がん剤治療をした人やこれから受ける人は、生ものはじめ食中毒に注意することも大切です。

 なぜかというと、抗がん剤治療を受けると、副作用で骨髄機能が低下するため、白血球の数が減少しやすい。中でも好中球の減少です。好中球は白血球全体の45~75%を占めるとされ、免疫の主力のひとつ。その働きは、細菌や真菌を貪食して分解することで感染症から身を守ることです。好中球の減少は免疫力の低下を意味します。

 免疫力が減少すると、ふだんは大したことない病気が悪化することもあり、風邪も侮れません。外出後や食事前などの手洗いとうがいは必須。口の中の清潔も重要で歯ブラシや歯間ブラシもお勧めですが、やり過ぎで口の中を傷つけるのは逆効果ですから、ブラシなどはやわらかめのものを選ぶことです。

 そして、食中毒対策として生ものは避けるのが無難。先日、90代の女性がウナギ弁当を食べて亡くなったことが報じられました。弁当を食べた130人以上が下痢や嘔吐などを訴え、調査の結果、黄色ブドウ球菌が検出されたそうです。女性は持病があり、細菌と死亡との因果関係は不明ですが、夏は食中毒が増える時季ですから要注意です。

 抗がん剤投与から約1週間後~10日後にかけて好中球が減少。約10日後~2週間後が最も危険な時期です。白血球の数は約3週間後から回復し始め、それに伴って免疫力も少しずつ回復します。抗がん剤の治療中、治療後はしばらく自己管理を徹底してください。

(中川恵一/東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授)

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