モロッコサッカー躍進の秘密…22年W杯に続きパリ五輪4強、準決勝敗退も初メダルに王手
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年8月7日 9時26分
手前がモロッコ(C)共同通信社
【パリ五輪】男子サッカー
パリ五輪のサッカーでベスト4入りを果たしたモロッコの代表。同国サッカー史上初のメダル獲得に手をかけたその快進撃を、2022年W杯カタール大会のモロッコA代表になぞらえる向きは多い。
A代表は中東カタールの地でベルギー、スペイン、ポルトガルと欧州の列強を次々に撃破。アフリカ初のW杯4強入りという快挙を成し遂げた。
兄貴分に続いて今五輪に臨むU23代表(OA3人枠を含む)が、日本時間6日午前1時にキックオフされた準決勝で優勝候補のスペインと対戦した。
モロッコが1ー0とリードして迎えた後半21分、準々決勝の日本戦で2ゴールのスペインFWフェルミンロペスが同点弾。40分にはDFサンチェスが決勝点を奪い、モロッコは決勝進出を絶たれてしまったが、A代表と同じように五輪サッカーでも存在感を示した。
そのモロッコサッカーの強さの源流として「欧州に生まれ育ったモロッコ系の選手を代表に引き入れることに成功している」ことが挙げられる。
たとえばパリ五輪メンバーの19歳FWベンセギルは、フランスに生まれて1部モナコの下部組織でプレー。18歳でトップチーム入りして日本代表MF南野拓実のチームメートとなり、昨年12月にフランス1部デビューを果たした。
年代別のフランス代表の常連だったが、2024年3月にモロッコ代表としてデビューした。
モロッコサッカー協会は、自国にルーツのある多くの選手と定期的にコンタクトを取っている。
ベンセギルの場合、フランス協会と綱引きを繰り広げた結果、A代表の国を選択するに当たって、モロッコのユニフォームを選ぶことを決意させたのである。
OA枠で五輪代表入りし、主将を勤めているDFハキミ(25歳)は、スペインのマドリード州に生まれて強豪レアル・マドリードの下部組織に入り、トップチームから独ドルトムント、伊インテルで活躍して2021年にパリSGに入団。欧州屈指の右SBとしてカタールW杯4強入りの原動力となった。
レアルの下部組織時代からモロッコ協会が囲い込み、17歳で両親の祖国であるモロッコの代表としてデビューしている。
モロッコ生まれの選手については、王室の手厚いサポートを受けて着実にレべルアップを続けている。元ワールドサッカーグラフィック誌元編集長・中山淳氏が言う。
「現国王のムハンマド6世が2010年、国内に『ムハンマド六世 フットボールアカデミー』を創設しました。充実したトレーニング施設を建設し、若手の育成に乗り出したことが奏功し、モロッコに生まれ育ったサッカー選手のレベルアップが図られています。かつての宗主国フランス、スペインなど欧州で生まれ育った選手と王室肝入りのアカデミーで育成された選手が、うまく融合していることが強いモロッコを作り上げています」
1996年から1998年、2000年にモロッコで自国代表、海外から招待された3カ国の代表によるトーナメント大会「ハッサン国王杯」が開催され、2000年大会には2年後の2002年日韓W杯の開催国である日本が招待された。
「アフリカ初のW杯開催国を目指し、そのアピールのために国際大会を開いていたモロッコですが、1994年大会から5回、立候補しながら敗れている。2010年には、南アフリカにアフリカ初の開催国の名誉を奪われてしまった。モロッコは2030年W杯をスペイン、ポルトガルとの共同開催という形で立候補し、昨年10月にFIFAが3カ国の共催を承認しました。モロッコは<実力のともなったアフリカのW杯開催国>となります」(前出の中山氏)
北アフリカの雄モロッコから目が離せない。
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