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陽子線治療の利点は「止まる」と「止まったところで最大パワー」【陽子線でがんを狙い撃つ】#2

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年8月7日 9時26分

陽子線治療の利点は「止まる」と「止まったところで最大パワー」【陽子線でがんを狙い撃つ】#2

中部国際医療センターの陽子線(提供写真)

 がん治療の放射線は大きく分けて、光子線と粒子線がある。従来の放射線治療であるX線は光子線。波長の短い光の波が水と反応し、そこから発生するフリーラジカルががん細胞のDNAを障害して殺傷する。

「一方、粒子線に該当するのが陽子線や重粒子線です。X線の殺細胞効果は間接的なものですが、陽子線は粒子が直接がん細胞にぶつかり、DNAを切断します」(中部国際医療センター陽子線がん治療センター施設長・不破信和医師=以下同)

 粒子線の利点は「止まる」、そして「止まったところで最大の線量を放出する」だ。

「がんの深さや形状に合わせ、がん細胞の位置で止まるように照射を設定すれば、ピンポイントで集中的に治療できます。がんより前の正常細胞へのダメージは極力小さくでき、がんの位置で止まるため、がんより先の正常細胞へのダメージはゼロになります」

 X線による放射線治療は肝臓へのダメージから、肝臓がんの治療としては主流ではなかった。しかしピンポイントでがんを狙える陽子線治療なら条件によっては可能だ。

 兵庫県立粒子線医療センターで巨大肝がんの陽子線治療を受けた72歳男性は、最大径10センチ以上あったがんが、治療2カ月後には手術で除去したかのように縮小。腫瘍マーカーPIVKA-Ⅱ(ピブカ・ツー=肝がん細胞が多いほど高値)は、治療前8万4600から、治療2カ月後4060、そして1年半後には16にまで減少した。

 73歳の早期肺がんの男性は肺機能が悪く在宅酸素療養中のため、手術が非適用。陽子線治療を受け、肺がんの消失が見られた(名古屋西部医療センター症例)。

 不破医師は南東北がん陽子線治療センター長時代、ステージⅡ、Ⅲの食道がんへのX線と陽子線の治療成績(どちらも薬物療法と併用)を比較した論文を発表している。それによると、X線では完全奏効率(がんの兆候が全てなくなること)が、国立がん研究センター66%、東北大学68%、厚労省がん研究助成金指定研究「JCOG9906」62%。それに対し、南東北がん陽子線治療センターの陽子線の成績では74%。なお、国立がん研究センター、東北大学、「JCOG9906」は、がんが食道周囲臓器に浸潤しているT4の患者(がんの深さを示す値で最も深い)は除外しているが、南東北がん陽子線治療センターでは含んでいる。

「単純な比較はできませんが、陽子線により心臓への線量が減らせたことが貢献しているのではと考えています」(つづく)

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