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ライバル登場で株価急落…エーザイの認知症治療薬を巡る「明と暗」(重道武司)

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年8月8日 9時26分

ライバル登場で株価急落…エーザイの認知症治療薬を巡る「明と暗」(重道武司)

厚労省が承認したアルツハイマー病新薬「レカネマブ(商品名レケンビ)」/(エーザイ提供)

【経済ニュースの核心】

“刺客”現る──とでもいったところか。エーザイと米バイオジェンが共同開発した世界初のアルツハイマー型認知症治療薬「レカネマブ」に手ごわいライバルが登場する。製薬大手の米イーライ・リリーが手掛けた「ドナネマブ」だ。

 すでに米国では食品医薬品局(FDA)が7月、製造販売承認を与えていたが、国内でも厚生労働省の専門部会が先週、承認を了承した。近く正式に承認される見込みだ。

 2つの治療薬はいずれも「作用機序に大きな違いはない」(医療関係者)。アルツハイマー型認知症を引き起こす原因物質とされるアミロイドβを取り除くことで認知機能劣化の進行速度を抑制する。軽度認知症や軽度認知障害(MCI)などの患者を対象にした治験で、偽薬(プラセボ)を投与したグループと比べ、ドナネマブは約29%、レカネマブは同27%、1年半後の進行を遅らせる効果が確認できたとしている。


 副作用もほぼ共通しており、どちらも脳出血や脳の腫れが発現するケースがある。強いて差を指摘すればドナネマブの方が発現確率が「やや高い」(製薬業界筋)といったことくらいだろう。

 ただQOL(生活の質)にはいささか優劣が生じる。レカネマブが2週間に1回の投与を必要とするのに対し、ドナネマブは4週間に1回で済むからだ。その分通院などの手間が省ける。

■「ドナネマブ優勢」か

 ドナネマブの米国での薬価は3.2万ドル、レカネマブは2.65万ドル。日本での薬価は承認後決まるが、米国と同様「ドナネマブの方が高くなる見通し」(厚労省筋)だ。ただレカネマブは投与期間1年半後も継続投与が必要だが、ドナネマブは1年半後にアミロイドの除去が確認できれば原則、投与は終了する。医療保険財政全体の負担を考えれば「ドナネマブ優勢」との見方が成り立たなくもない。

 エーザイ株は急落した。もともと7月下旬に欧州医薬品庁(EMA)がレカネマブに否定的な見解を示したことで下落基調に転じていたところに、競合品登場のネガティブ情報が伝わったからたまらない。地合いの悪さも重なって足元の株価は年初来安値水準が続く。

 もっとも製薬業界関係者からは「ドナネマブによって認知症薬への認知度が高まり市場全体が底上げされるのも確か。エーザイにとってプラスに働く効果も少なくない」との声も上がる。

(重道武司/経済ジャーナリスト)

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