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バングラデシュで首相退陣…日本企業進出の“最後のフロンティア”混沌で大慌て

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年8月9日 9時26分

バングラデシュで首相退陣…日本企業進出の“最後のフロンティア”混沌で大慌て

退陣となったバングラデシュのハシナ首相(C)ロイター=共同 

 学生のデモで多数の死者を出したバングラデシュのハシナ首相が5日、辞任した。ハシナ氏はインドに逃亡、暫定政権が樹立される見通しだが状況は混沌としている。

 バングラデシュでは、独立戦争時に活躍した“解放戦士”の子孫に与える公務員採用の優先枠に対し、学生が撤廃を求める運動を先月から起こしていた。運動の激化について政府関係者は「イスラム聖戦主義者が学生運動を乗っ取り、暴力的なものに急変させた」と語っていた。

 一方、識者の見方は違う。岐阜女子大学特別客員教授の倉沢宰氏によると「もともと平和的な学生運動だったが、政権与党(アワミ連盟)が送り込んだ“武闘派”が学生と対立を激化させ、そこに治安部隊が発砲した構図です」と説明する。死者数は累計で約350人。人力車夫や路上の物売り、子どもなど、デモと無関係の市民も巻き添えになった。

日本支援のMRTに流した涙が引き金に?

 日本のODAで建設したMRT(都市高速鉄道)も攻撃の対象になった。その後のバングラデシュの運命を決めたのは、このときのハシナ首相の行動だったと言っても過言ではない。「叩き壊されたMRTの駅舎設備を見てハシナ首相は涙を流しましたが、学生の死については何の言及もなかったのです」(前出の倉沢氏)。“ハシナの涙”は学生のみならず国民の怒りを買うことに。今月4日、デモは最高潮に達し、政権を幕引きに追い込んだ。

 15年続いたハシナ政権も近年は独裁色を強めていた。その独裁が経済発展を安定的なものにし、外資を集めたのも事実である。現在、同国には315社の日本企業が進出し、1122人の日本人が生活をしている(数字は外務省)。「近年はバングラ経済も7%台の成長を遂げ、日本人数も倍に増えました」(元駐在員)。バングラデシュは穏健なイスラム国家で親日国でもあることから、2010年代から「チャイナプラスワン」(中国リスクを回避するための生産拠点の分散)の選択肢となってきた。

「空白地帯にどんな勢力が入り込むかは未知数」という声もあるが、「学生が独裁をひっくり返すパワーは注目に値する」と話す日系工場経営者も。暫定政権の首相顧問に、グラミン銀行創設者でノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌス氏(84)が就く見通しだ。日本企業進出の“最後のフロンティア”とも言われたバングラデシュの、一喜一憂を注視したい。

(取材・文=姫田小夏/ジャーナリスト)

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