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陽子線でがんを狙い撃つ(4)治療を受けるなら最新装置の第3世代

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年8月9日 9時26分

陽子線でがんを狙い撃つ(4)治療を受けるなら最新装置の第3世代

中部国際医療センターの陽子線(提供写真)

「究極の放射線治療」として一時期メディアで取り上げられ注目を集めたのが重粒子線治療だ。陽子線と同様、粒子線の一種。中部国際医療センター陽子線がん治療センター施設長の不破信和医師が言う。

「私は兵庫県立粒子線医療センター時代、重粒子線と陽子線の両方を経験しています。放射線ではがん細胞のDNAを切断してがんを殺しますが、X線ではDNAを切断する力はあまり強くないが、重粒子線はズドンと切れる。陽子線はこの中間くらい。重粒子線は切れ味が非常にいいのです。しかし過去の治療成績から、重粒子線より陽子線の方が向いているがんが少なくないと感じています」

 重粒子線で治療した肝がんと、陽子線で治療した肝がんを比較した研究では、がんが4センチ未満、4センチ以上ともに全生存率は同等だった。頭頚部悪性黒色腫の治療成績を陽子線と重粒子線で比較した研究でも、全生存率、無再発生存率、局所制御率いずれも同等だった。

 喉頭がんで重粒子線治療を受けた後、3カ月後に重篤な咳、呼吸困難を発症、5カ月後には披裂軟骨欠損、気道狭窄が認められ、6カ月後には喉頭全摘となった苦い経験もある。

 重粒子線はがん細胞を殺す力は強く、究極の放射線治療とされるが、治療部位によっては重い障害を発症することがある。陽子線を忍者に例えるとすると、重粒子線はお相撲さん。この疾患には重粒子線、この疾患には陽子線が向いているという研究が現在、進められており、将来的にはおのおのの役割が明確にされるものと思われる。

 陽子線治療を受ける際、治療装置にも目を向けたい。中部国際医療センター陽子線がん治療センターで設置しているのはアメリカ・バリアン社製の世界最新型だ。米ペンシルベニア大と中部国際医療センターにしか導入されていない。

「陽子線治療装置は第1世代、第2世代、第3世代と進化しています。第1世代(ブロードビーム)装置では、X線より優れているとはいえ、がんの複雑な形状に対応しきれていない。当院で導入している第3世代はスポットスキャニング法といって、約4ミリのペンシルビーム(陽子線の細いビーム)で塗り絵のようにがんを塗りつぶしていくので、複雑な形状に対応できる。現時点での放射線治療の中では、正常組織へのダメージを最も抑えられます。複雑な形状の頭頚部がんではこの装置の有用性を実感しています」

 胆管がんのある患者は、陽子線治療で受診予定だった国内で非常に有名ながん治療病院に治療装置を問い合わせたところ、第1世代との回答。スポットスキャニング法で陽子線治療を受けられる病院を探し、そこに決めた。

 がん治療は、進行がんや予後の悪いがんほど、命を懸けた闘いとなる。どんな武器を持って闘うのか──。いざという時のために、最新の知識を持っておきたい。(おわり)

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