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農林中金の資本増強はJA、JA信農連との“三位一体”の証し…今期純損失は1.5兆円の見通し(小林佳樹)

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年8月10日 9時26分

農林中金の資本増強はJA、JA信農連との“三位一体”の証し…今期純損失は1.5兆円の見通し(小林佳樹)

農林中金の奥和登理事長(C)共同通信社

【経済ニュースの核心】

 農林中央金庫が1日発表した2024年度第1四半期(4~6月期)の連結決算は4127億円の純損失となった。今年度中に、運用収益が悪化した外国債券など10兆円規模の債券を売却する方針で、今期の純損失は約1兆5000億円まで膨らむ見通しだ。

 同時に資本増強の詳細も発表した。中核資本に算入できる後配出資7360億円を9月末に受け入れるほか、6000億円の期限付き劣後ローンを24年度中に借り入れる。調達額は計1兆3360億円に及ぶ。当初、資本増強額は1兆2000億円規模を想定していたが、1000億円強上乗せされた理由について農林中金は、「出資者である農業協同組合(JA)などの会員から見込みより多くの応募があったためだ」と説明した。

■巨大損失の背景

 農林中金の利益は市場運用する、主に約56兆3000億円(24年3月末)の有価証券ポートフォリオに依存している。農協などJAから持ち上がる潤沢な円資金を国内外の有価証券などで運用する一種の巨大な投資ファンドのようなものだ。「国内の円で日本国債を買って、それを担保にドルを調達して、米国債などに投資する」(農林中金関係者)というのが基本投資フローだ。そこに米国の矢継ぎ早な利上げによる投資有価証券の価格急落とドル高による調達コスト増が襲い、巨額な損失につながった。「農林中金の運用失敗のツケをなぜJAが負担しなければならないのか」と批判する意見も聞かれる。

 だが、「JAの経営は農林中金による利益還元によってはじめて維持できている。農林中金のグローバル運用は、日本の農業を守る生命維持装置」(JA関係者)だ。半面、ガバナンスは底辺を支えるJAが握っている。株式会社で言えば、大株主はJAであり、重要な決定権はJAが持ち、全国500におよぶJAの代表権を持つ全国農業協同組合中央会(JA全中)が握っている。今回の農林中金の1兆3000億円におよぶ資本増強にJAが応じるのは、そうしたガバナンスゆえであり、JA、JA信農連、農林中金は三位一体の関係にあることを表している。「JAなくして農林中金は存在しえず、農林中金なくしてJAは生きていけない。互助の関係」(JA関係者)なのだ。

 ここにきて農林中金の危機の震源である米国の長期金利は低下傾向にある。農林中金にとっては、保有債券の含み損が減少する可能性があり、経営的には追い風が吹き始めた。農林中金の経営はV字回復する可能性が高い。

(小林佳樹/金融ジャーナリスト)

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