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ウイルスが原因ではない肝臓がん…リスク判定検査と減酒の効果(中川恵一)

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年8月10日 9時26分

ウイルスが原因ではない肝臓がん…リスク判定検査と減酒の効果(中川恵一)

ほどほどに

【Dr.中川 がんサバイバーの知恵】

 がんといっても、種類によって原因はさまざまです。そのうち肝臓がんは、7~8割をウイルス感染が占めています。C型肝炎ウイルスとB型肝炎ウイルスです。

 国立がん研究センターのコホート研究によると、肝炎ウイルスに感染している人の肝臓がん発症リスクは感染していない人に比べて約28倍。ウイルス別では、C型肝炎が約36倍で、B型肝炎が約16倍。C型とB型の両方に感染していると、約47倍です。重複感染のリスクについてはサンプル数が少なく、慎重な判断が必要ですが、それでもいずれかのウイルスに感染することのリスクの高さは歴然でしょう。

 これらのウイルスに感染したからといって、すぐ肝臓がんになるわけではありません。持続感染によってC型やB型の肝炎から肝硬変を発症。そこから肝臓がんになる流れです。ですから、ウイルス性肝炎の段階でウイルスを駆除する治療を受ければ、その後の悪化を食い止め、肝臓がんも防ぐことができます。実際、抗ウイルス薬によってウイルスをほとんど駆除できますから、肝臓がんは全体として減少傾向です。

 そんな中、増えているのが、ウイルス感染が原因ではない肝臓がんで、脂肪肝やアルコールを原因とするタイプです。メタボが社会問題となり、4人に1人が脂肪肝とされますから、今後要注意でしょう。

 阪大病院をはじめとする研究グループは、脂肪肝の人の血中タンパク質GDF15の数値を調べて、肝臓がんのリスクを調査。

 その結果、その数値が1.75ナノグラム/ミリリットルより大きいと、5年後の肝臓がん発生率は16.5%と高率であることが判明。そのほか、肝臓の状態が悪化することによる入院や死亡も起こりやすいことが分かりました。

 これから脂肪肝の人はこの数値を指標に、より精密な検査や治療が行われるようになるかもしれません。検査頻度をどれくらいにするか検討するには、役立つと思われます。

 私は晩酌が好きで、その影響によるまだら脂肪肝です。そのチェックのため、定期的に腹部エコー検査を受けています。その結果を見ながら、一時的に晩酌の量を減らすなどしています。

 禁煙が効果を得るには、20年以上の長い年月が必要ですが、断酒や減酒の効果は比較的早く認められることが分かっています。韓国の調査によると、軽度飲酒者が断酒すると、アルコール関連がんのリスクが低下したほか、重度飲酒者が中等度もしくは軽度に減酒するとアルコール関連がん・全がんリスクがともに減少しました。調査機関の中央値は6.4年でした。

 軽度、中等度、重度の純アルコール量はそれぞれ1日15グラム、15~29.9グラム、30グラム以上です。純アルコール量は、お酒の量(ミリリットル)×アルコール度数×0.8で計算できますから、350ミリリットルの缶ビールなら14グラム。それで測ると、軽度は1本とちょっと、中等度は2本くらいで、重度はそれ以上になります。

 お酒好きの人が缶ビール1本にとどめるのは大変だと思いますが、休肝日を設けたり、一時的に節酒したりして、飲酒量を減らす工夫は必要だと思います。

(中川恵一/東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授)

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