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浅野温子があまりに可愛くて…フジ「抱きしめたい!」では台本にない「クーパーポーズ」を(石田純一)

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年8月14日 9時26分

浅野温子があまりに可愛くて…フジ「抱きしめたい!」では台本にない「クーパーポーズ」を(石田純一)

石田純一(C)日刊ゲンダイ

【石田純一 70歳のダンディズム】#28

 石田純一が2024年2月から日刊ゲンダイで連載を続けている「70歳のダンディズム」。都立青山高校に通っていた青年時代から早大商学部に進学、米国留学を経て、「演劇集団 円」から俳優の道に進んだ半生をご本人の口から語っている。さらに最初の結婚相手の星川まりさんと長男のいしだ壱成(49)のこと、古希を迎えてからの体のメンテナンス、昨年開いた「炭火焼肉 ジュンチャン」、現在の妻の理子さん(48)と3人の子どものこと……とプライベートな話題も包み隠さずしていくれて“石田らしさ全開”の連載となっている。連載28回目の今回は、フジテレビ系のドラマ「抱きしめたい!」の“事件”について。

  ◇  ◇  ◇

 1988年、フジテレビ系のドラマ「抱きしめたい!」の撮影が始まった。キャストは浅野ゆう子、浅野温子のダブル浅野。岩城滉一、本木雅弘らスターがズラリ。演出は当時、飛ぶ鳥を落とす勢いだった山田良明、河毛俊作の黄金コンビ。

 今でも思い出すが、撮影現場は生き生きとしていた。俳優、プロデューサー、演出、脚本といったドラマ作りの“中核”だけではない。AD、スタイリスト、メーク、照明と全員の顔が輝いていた。それぞれが「時代をつくっているんだ」という自覚と興奮で高揚していた。つくづく、自分も参加できてよかったと思ったものだ。

■あとがない僕に神が与えてくれた最後のチャンス

 このドラマに出られるようになったのは陣内孝則がTBSのドラマに回ったこと、代役で白羽の矢が立ったイケメン俳優、加藤雅也が断ってきたこと、2つの偶然が重なったことは前に書いた。僕はといえば、事務所の社長に「9月までに俳優として芽が出なければ引退する」と申し入れていた。あとがない僕に神が与えてくれた最後のチャンスのような気がした。

 そこで、僕は心に期した。「後悔しないように自分のやりたいようにやろう」と。

「やりたいようにやろう」と思っても、ふつうは監督、演出がデーンと構えている。現場を仕切るのが彼らであって、俳優の自由は制限される。それでも、当時のフジテレビには「まずはやってみてよ」みたいな「寛容さ」があった。そこが自分とフジは感性が合うような気がした。だから、「自分がやりたいようにやってみよう」と心に誓ったのである。

 それが試される場面がいきなり来た。

 僕は二宮修治という名前の女性雑誌編集者という役回りだった。モデルの撮影現場で活躍する池内麻子(浅野温子)が何となく、気になっていて、食事に誘う。その帰り道のシーンだ。

「最近、なんか恋人とぎくしゃくしていて」と二宮はそれとなく、切り出す。そして、真顔になると「それは君のせいかもしれない」と告白する。

 麻子は驚き、照れて、「なにそれ、人のせいにしないで。私帰る」と歩き出し、振り向きざま、「今度は私がおごるから」とほほ笑むシーンだ。

 台本のト書きには帰ってしまう麻子を「暗く見送る修治」とあった。でも僕は振り向きざまの麻子=浅野温子の笑顔があまりにも可愛くて、即興で「クーパーポーズ」をしてしまったのである。「クーパーポーズ」とは人さし指と中指を2本くっつけ、眉毛にちょっと触れて、敬礼のようなしぐさをすることだ。

 ゲーリー・クーパーが映画「モロッコ」でマレーネ・ディートリヒ相手に決めたポーズである。それをこのシーンでやったものだから、騒ぎになった。

(石田純一/俳優)

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