やり投げ金メダル北口榛花 日大時代の監督に聞いた「寝転がってカステラをパクリ」に見た強さ
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年8月15日 9時26分
──これまでの日本選手にはいないタイプですね。
「そうですね。国内に専門のコーチがいないことに不安を抱き、フィンランドのやり投げ講習会で出会ったセケラックコーチに指導を直談判し、単身チェコに向かった。英語圏ならまだわかりますが、当時の北口はチェコ語がまったく話せない。それでもチェコに一人でやってきて、セケラックコーチは『まさか本当に来るとは』と、驚いたそうです。その後はやり投げのトレーニングだけでなく、習得が難しいチェコ語も勉強し、今では現地のインタビューにスラスラ答える。そんな過程を知っているからチェコの人々も北口の金メダルを喜んでくれたのです。それにしてもチェコに行ったときは私もビックリしました」
──多くの選手はよく「メダルを目指したい」と言いますが、そのために何が必要なのか考え、行動に移す点が欠けています。北口選手は違いました。
「私の教え子(千葉・成田高時代)だった室伏広治(アテネ五輪ハンマー投げ金)は当初、父親の重信さん(アジア大会5連覇、日本選手権10連覇)に指導を受けていましたが、米国のコーチに師事してから一人で海外を転戦するようになった。北口に『世界を知っている室伏に会って、いろいろ聞いてみたらどうだ』と助言したことはあります。北口は自分で考え、私たちが信じられないようなアプローチで優秀なコーチを見つけ、結果を残した。わずか4年前、日本の女子選手が五輪のやり投げで金メダルを取ると誰が予想できたでしょうか。セケラックコーチとの相性も良かったように思います」
──どんな点ですか。
「例えば、筋力がある選手が多いドイツでは、やりを正面に向けて助走し、投げるリニア型が主流です。チェコはねじった体を戻して投げるローテーション型が多い。北口はこのローテーション型で投げているのですが、まっすぐな助走からクロスに入り体のひねりが始まり、やり先が右へと向いていく。その後、投げの構えで体の柔軟性と肩の柔らかさで体を反らしやりを後方に残す。そのため、やりの角度は高くなり、またやりに力を加える時間が長くなる。だから多くの選手が苦手とする追い風に強い。体が柔軟で体幹がしっかりしている北口にはこのローテーション型が合っていたのです」
■日本人の殻を破る
──これで2015年世界ユース、23年世界選手権、パリ五輪の3冠です。
「世界ユースに勝っていますが、北口が19年に、未知のチェコへ単身留学したのは、そこまでやらなければ世界選手権や五輪で勝負できないと思ったからでしょう。自分への賭けでもあったと思う。そこまで考え抜いても、なかなか行動に移せるものではありません。そんなスケールの大きな選手ですからね。競技中にうつぶせになってカステラを食べることなんて、これっぽっちも気にしませんよ(笑)」
──北口の金メダルで個人競技の選手は海外に出ていくケースが増えるのではないですか。
「そう思います。北口のように、自分の殻、日本人の殻を破ってほしいですね」
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