「脂質異常症」の新たな標準薬…スタチン代わる「ベムペド酸」とは?
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年8月15日 9時26分
![「脂質異常症」の新たな標準薬…スタチン代わる「ベムペド酸」とは?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/gendainet/gendainet_1068068_0-small.jpg)
これまでスタチンによる副作用で服用中止の人も多くいたが…
「スタチン」は血液中のコレステロールを低下させることで動脈硬化リスクを下げて心臓病などを予防する。開発には日本人研究者が深く関わっていて、その研究を基に米国人研究者がノーベル賞を受賞。また、スタチンを製品化したのも米国製薬会社だ。それ以降、世界中の動脈硬化に悩む患者の命を救ってきたが、それとは別の仕組みで血液中のコレステロールを低下させる新薬がこの秋にも日本に登場するという。どんな薬なのか? 本紙で連載中の「役に立つオモシロ医学論文」の著者で、病院薬剤師でもある青島周一氏に解説してもらった。
◇ ◇ ◇
「血液中に含まれる脂質とは、コレステロールや中性脂肪を指します。体に悪いイメージがありますが、糖質、タンパク質と並び、健康の維持に欠かせない3大栄養素のひとつです。とりわけコレステロールは、全身の細胞構造を維持する役割を担い、ホルモンやビタミンDなど生命活動に必要な物質の原料となります。しかし、血液中のコレステロールが増えすぎると、動脈硬化の原因となります」
動脈硬化とは、血管の内壁にコレステロールやカルシウムが蓄積し、血管の弾力性が失われるとともに、血管の内側が狭くなってしまう状態。進行すると徐々に血流が悪くなり、心臓病や脳卒中の発症リスクが高まる。
「血液中の脂質が増加した状態を脂質異常症と呼びます。とりわけ、LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)は、心臓病の発症リスクを高める危険因子であることが知られています。脂質異常症の治療において、中心的な役割を果たしてきた医薬品がスタチンです。スタチンは、コレステロールの合成に必要な酵素の働きを抑えることでLDLコレステロールを低下させます」
スタチンの効果はまた、単にLDLコレステロールを下げるだけでなく、心臓病の発生リスクを低下させることが複数の大規模臨床試験によって明らかにされている。そのため、脂質の異常値を認める多くの人にスタチンが投与されていて、英国医師会の公式ジャーナルによれば、世界83カ国において約1億4500万人がスタチンを使用していたと報告されており、世界で最も服用されている薬のひとつと言える。
「しかし、スタチンを処方された患者さんの25~50%で、1年以内に服薬を中止することが知られています。スタチンは筋肉痛や頭痛などの副作用が生じることも多く、肝臓の機能を低下させることもあります。このような、日常生活に許容しがたい副作用によって、スタチンの服用が継続できなくなる状態をスタチン不耐と呼びます。スタチン不耐は女性や高齢者、糖尿病を有する人で多いことも知られており、スタチンに代わる効果的な治療薬の開発が大きな課題でした。そのような中、脂質異常症の新たな治療選択肢として注目されている薬が『ベムペド酸』です」
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