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映画「侍タイムスリッパー」は必見! 時代劇と侍への愛があふれる快作(金澤誠)

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年8月16日 9時26分

映画「侍タイムスリッパー」は必見! 時代劇と侍への愛があふれる快作(金澤誠)

「侍タイムスリッパー」(C)2024未来映画社

 今年の秋からは、山田風太郎の小説を役所広司主演で描いた「八犬伝」(10月25日公開)をはじめ、脚本家・笠原和夫の原案を白石和彌監督が映画化する「十一人の賊軍」(11月1日公開)や、垣根涼介の直木賞受賞作が原作の大泉洋主演作「室町無頼」(2025年1月17日公開)といったアクション大作など、時代劇の意欲作が続々登場する。

 その前に、時代劇ファンならぜひ見てほしい快作が8月17日から公開される。それが「侍タイムスリッパー」だ。幕末の侍が現代にタイムスリップするという設定だけ聞くと、よくある話だと思うかもしれないが、これが大間違い。時代劇と侍スピリットへの愛が込められた、笑いと感動の一大エンターテインメントになっているのだ。

 幕末の京。会津藩士・高坂新左衛門は、藩の密命を受けて長州藩士殺害へと向かう。狙う相手と斬り合ううちに2人に雷が落ち、高坂は気絶。気が付くとそこは、現代の時代劇の撮影所。事態をのみ込めない高坂だったが、幕末から100年以上経っていることを知り、この時代に自分ができることは時代劇の「斬られ役」しかないと思い定め、彼は「斬られ役」として注目を浴びていく。

 この前半は、“劇”としての斬り合いに戸惑いながらも、剣の腕を生かすために「斬られ役」に打ち込んでいく高坂を、現代の生活に馴染んでいくさまを含めてコミカルに描いている。その背景に、もはや「斬られ役」では食べていくこともままならない、斜陽の時代劇の現状もきっちりと映し出している。

■生き方にけじめをつけるため、劇中で対決

 後半になって、作品は一気に転調する。一度は時代劇から離れた大スターが、久々に時代劇映画に主演すると発表。その宿敵となる相手役に、高坂を指名してきたのだ。実はこの大スターは、30年前にタイムスリップしてきた、かつて高坂が狙った長州藩士。もはや互いの藩は明治維新で消え失せたが、高坂の中には大スターに対する複雑な感情がある。2人はそれぞれの侍としての生き方にけじめをつけるため、劇中の対決へと臨んでいく。

 何といっても高坂を演じた山口馬木也の演技が素晴らしい。彼は「剣客商売」シリーズの秋山大治郎や、新たに松本幸四郎主演で始まった「鬼平犯科帳」では“鬼平”の親友・岸井左馬之助を演じているが、長編映画の主演はこれが初めて。ここでは長年時代劇で培ってきた剣技を存分に披露して、しかも“劇”で使う竹光を重量感が出るように見せたり、クライマックスの闘いでは“本身”を使った斬り合いの緊張感も伝えている。言ってみれば彼は、時代劇俳優と侍の2つの顔を持つ男を演じ分けているわけで、その表現力の確かさで2時間10分の作品を最後まで見ごたえのあるものにしている。

 監督・脚本・照明・編集などを兼ねた安田淳一の「自主映画で時代劇を作ろう」という無謀な挑戦に対し、東映京都撮影所が特別協力。東映京都のスタッフも出演者も、脚本の面白さに引かれて作品に参加したというが、この時代劇への愛と娯楽作を作ろうとする熱意は半端なものではない。最近面白い時代劇がないと思っている方に、文句なくおすすめできる一本。17日からは東京・池袋シネマ・ロサ、30日から神奈川県・川崎チネチッタでの上映が決まっているが、もっと多くの人の目に触れてほしい拾い物の逸品だ。

(映画ライター・金澤誠)

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