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ブレイキンの選手たちが示した新たな五輪理念のトリセツが衝撃的だった 「対戦相手も仲間」を体現した(春日良一)

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年8月16日 9時26分

ブレイキンの選手たちが示した新たな五輪理念のトリセツが衝撃的だった 「対戦相手も仲間」を体現した(春日良一)

すがすがしかったSHIGEKIX(C)J MPA

【徹底!実践五輪批判】#16

 オリンピックモットーの「より速く、より高く、より強く」は、東京五輪2020から「共に」が付け加えられた。

 その時、初めて五輪に登場したスケートボードでは、まさに「共に」の世界が展開された。選手はライバルの妙技に素直に賛辞を贈り、失敗した選手にはその挑戦を称え励まし合う。「共に」至高のパフォーマンスに挑み、参加者全員がファミリーのようであった。

 パリ五輪ではその輪に観客も加わった。無観客の東京五輪ではかなわぬことだった。伝統的競技では表現することが難しい「対戦相手も仲間だ」という思いをわかりやすく示してくれた。

 まさに新たな五輪理念のトリセツといえる。

 パリ五輪で初めて登場したブレイキンはさらに衝撃的なトリセツを見せてくれた。五輪のステージで展開された選手たちのダンスは、その場で初めて聴くアップテンポな音楽に合わせて激しく素早くアクロバチックな動きだ。その動きは驚きの連続である。相手を挑発するように、それぞれが交互に自分のダンスを「これでどうだ!」と披露していく。

 だが、それは自分の凄さを見せて闘いながら相手の技と力を認めていく過程のようにも見える。最後は互いをリスペクトして終わる。あたかも「停戦のススメ」のようだ。ブレイキンは元々、貧困街で起こっていた絶えない縄張り争いをストリートダンスでの勝負に変えたところから生まれたと聞けば納得である。

 パリ五輪は大きなミッションを抱えていた。オリンピック休戦の実現である。開催国の大統領としてマクロンは、習近平中国国家主席の助力を得つつロシアのプーチン大統領に働きかけ、ウクライナのゼレンスキー大統領にも休戦を促した。国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長は、選手村で世界に休戦を呼び掛ける「五輪休戦の壁」が披露される中で、「Give Peace a Chance(平和にも出番を)」と書かれたボードを選手らと掲げて平和を訴えた。

 しかし、事態は変わることはなかった。当たり前だ! オリンピックは平和の祭典といわれるがしょせん奇麗事、何もできないではないか!? という声が聞こえてくる。

 そうだろうか。スケートボードが見せた「共に」競うことの楽しさ、ブレイキンが見せた闘いながら相手をリスペクトする姿が世界の人々にもたらしたのは「平和への共感」ではなかったか。金メダルが期待されていた日本のSHIGEKIX(半井重幸)は素晴らしいパフォーマンスを見せたが、準決勝と3位決定戦に敗れ4位だった。

 それでも、彼は裁定が下ると笑顔で相手選手をハグした。みじんも悔しさを見せぬその姿は見ている我々もすがすがしい思いにさせてくれた。彼は旗手として閉会式で女子やり投げ金メダルの偉業を成し遂げた北口榛花とともに日の丸を抱えて歩いた。「オリンピックは平和をつくれないが、世界を突き動かす平和の文化をつくることができる」(閉会式でのバッハ会長スピーチ)と思わせるほどの満面の笑みであった。

(春日良一/五輪アナリスト)

  ◇  ◇  ◇

 ところで、アスリートたちが過ごした今大会の選手村では、いったい何万個の避妊具が配布されているのか。オリンピアンが語った選手村の「衝撃の実態」とは、どのようなものなのか。 

 ●関連記事【もっと読む】…では、それらについて詳しく報じている。

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