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PayPayが国内初の参入だが…デジタル給与払い普及への壁はまだまだ高い(小林佳樹)

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年8月17日 9時26分

PayPayが国内初の参入だが…デジタル給与払い普及への壁はまだまだ高い(小林佳樹)

振り込み上限は20万円というが(C)日刊ゲンダイ

【経済ニュースの核心】

 スマホ決済大手のPayPayは、厚労省から必要な指定を受けたとして、年内にもすべてのユーザーを対象に、給与をスマホ決済アプリに振り込む「PayPay給与受取」サービスを始めると発表した。デジタル給与払いに対応するのは国内では初めて。

 また、これに合わせて、ソフトバンクやLINEヤフーなどソフトバンクグループの10社は、希望する従業員に9月分の給与からPayPayアカウントへの支払いを始める。PayPayアカウントで受け取れる給与の上限は20万円で、超えた場合はあらかじめ指定した銀行口座などに送金される仕組みだ。

 だが、PayPayによるサービス開始で、すぐさまデジタル給与払いが社会に広がっていくのかは不透明だ。

「PayPayとほぼ同時に申請している楽天Edy、auペイメント、決済サービス『コインプラス』を手掛けるリクルートMUFGビジネスは昨年4月に申請をしているのにまだ認可が下りていない」(メガバンク幹部)ためだ。

 事実上、1年超たなざらし状態となっている。ネックとなっているのは各種の規制と、他ならない金融の正常化だ。

「デジタル給与サービスを提供する資金移動業者は、改正労基法施行規則で8つの指定要件をクリアしなければならない」(メガバンク幹部)という。まず金融庁に登録した上で、厚労相の指定を受けなければならない。かつ指定を受ける資金移動業者は、資本金や自己資本比率など銀行と同程度の財務要件が課された。さらに新たに口座残高上限額を100万円以下に設定している資金移動業者に限定することや、破綻時に口座残高全額をすみやかに労働者に保証する(保証期間と契約)ことなどの要件が課される。また、月1回は手数料なくATMなどで換金できることも条件となっている。

 これらの要件をクリアするためにかかるコストはバカにならない。国内の資金移動業者は昨年6月末時点で78社を数えるが、コスト負担からデジタル給与サービスに参入できるのは大手に限られるとみられている。

 また、ここにきて更なる壁が出現した。日銀による金融正常化だ。日銀は長年の金融緩和策から脱却し、利上げに踏み出している。これまでの金利のない世界から金利のある世界へと転換するわけだが、「デジタル給与サービスの受け皿となる資金移動業者のアカウント残高は預金ではないため、金利を付けることができない。これでは銀行の給与振り込みの方が得だ」(メガバンク幹部)となる。

 さらにデジタルマネーで支払われる給与は、犯罪者にとっては格好の標的となる可能性もある。2020年に発生したドコモ口座を介した銀行預金の不正流出問題に類似したシステムの抜け穴を突いた犯罪も起こる可能性は捨てきれない。デジタル給与サービスには高い壁が立ちはだかる。

(小林佳樹/金融ジャーナリスト)

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