1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

夏の脳梗塞…後遺症を残さない血栓回収療法は時間との勝負

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年8月17日 9時26分

夏の脳梗塞…後遺症を残さない血栓回収療法は時間との勝負

夏は熱中症だけでなく脳梗塞のリスクも高くなる(C)日刊ゲンダイ

 全国各地で気温40度前後の猛暑日が続いている。暑い夏は熱中症だけでなく脳梗塞のリスクも高くなる。2023年に発表された脳卒中データバンクの資料によると、一年のうち脳梗塞の症例数が最も多かったのは6~8月だと報告されている。一宮西病院脳神経外科副部長の伊藤圭佑氏に聞いた。

 脳梗塞とは、脳の血管に血栓が詰まる病気だ。動脈硬化が原因で脳に行く太い血管に血栓ができる「アテローム血栓性脳梗塞」と、非常に細い脳の血管が詰まる「ラクナ梗塞」のほか、心房細動によって心臓でできた血栓が脳の血管に詰まる「心原性脳塞栓症」に分けられる。

「夏場に見られる脳梗塞で多いのが、アテローム血栓性脳梗塞とラクナ梗塞です。大量に汗をかいて脱水状態になると、血液中の水分量も減少するので血液が濃縮されてドロドロになります。そうすると血流が悪くなって血栓が作られやすい。糖尿病や高血圧、脂質異常症のほか、喫煙や多量の飲酒によって動脈硬化が進むと、脳梗塞を引き起こしやすくなるのです」

 脳梗塞の初期症状は、片側の手足のしびれや麻痺、額や口角が下がる顔面神経麻痺、ろれつが回らない構音障害、言葉が出てこない失語障害が特徴だ。ほかにも、めまいやふらつきなどが挙げられるが、これは熱中症の症状のひとつでもある。

 とりわけ夏の時季は軽い熱中症を疑って病院を受診したら、実は脳梗塞だったケースも珍しくはないという。重い後遺症を残さないためにも、少しでもいつもと違うと感じたらすぐに救急車を呼んだ方がいい。

「脳梗塞の治療はとにかく時間との勝負です。一般的には、t-PA療法(血栓溶解療法)と呼ばれる、脳血管に詰まった血栓を薬で溶かして血流を再開させる治療が選択されます。ただ実施できるのは発症から4.5時間以内と短く、太い血管が詰まっている場合には効果が期待できない。近年は、血栓をカテーテルで物理的に取り除く『血栓回収療法』が広まりつつあります」

 血栓回収療法は、足の付け根などから細いカテーテルを挿入し、カテーテルの先に付いた網目状のステントレトリーバーに血栓を絡めて体外に取り出す治療法だ。血栓ができた位置や大きさによっては、掃除機のように血栓を吸い込む吸引カテーテルを併用し、血流を再開させる。血栓回収療法は発症から8時間以内が適応時間とされ、4.5時間以内であればt-PA療法と同時に行うという。

「手術は局所麻酔が基本で、血栓回収療法自体は早ければ10~20分程度で終わります。昨年は50~60件実施し、中には搬送時には会話がまったくできず、手足が動かなかった人でも手術直後から普段通り会話ができて歩けるまで回復される方も少なくありません。ただ、脳梗塞は治療が一分一秒でも遅れると片麻痺や失語、高次脳機能障害といった後遺症が残るリスクが高い。本人や周囲が素早く異変に気付き血栓回収療法を行う病院に搬送してもらう必要があるのです」

■「FAST」で早期発見

 脳梗塞を早期に発見するための「FAST(ファスト)」という方法がある。Face(顔)、Arm(腕)、Speech(言葉)、Time(時間)の頭文字から作られた語だ。鏡の前に立ち、顔の片側が下がっていたりゆがんでいる、前へならえした状態で手のひらを上に向け、どちらか片側の腕が下がったり腕に力が入らない、言葉が出てこずろれつが回らないなどの症状があれば、脳梗塞の疑いが強い。さらに、脳梗塞の前兆として、一時的に手足が麻痺したりろれつが回らなくなる「一過性脳虚血発作(TIA)」が起こるケースもあるという。

「TIAは通常、数十分から1時間で回復しますが、治療せずに放置すると3カ月以内に15~20%、脳梗塞を発症するといった報告があります。命を守るためにもご自身の体の違和感を見逃さないことが大切です」

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください