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ホラー+太極拳…映画「サユリ」を見逃すな! 根岸季衣がパワフルな老婆を快演

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年8月20日 9時26分

ホラー+太極拳…映画「サユリ」を見逃すな! 根岸季衣がパワフルな老婆を快演

(C)2024「サユリ」製作委員会/押切蓮介/幻冬舎コミックス

 8月23日に公開される、白石晃士監督の「サユリ」。これは押切蓮介原作のホラーコミックを映画化したものだが、単なるホラー映画だと思ったら大間違い。ホラーはもちろん、青春映画、太極拳アクション、さらにはパワフルなシニアが活躍する一大エンターテインメント作品である。

 物語は中古の一軒家に神木家の家族7人が引っ越してくるところから始まる。やがて不思議な少女の笑い声が聞こえ始めて、家族のうち5人が不審な死を遂げる。残されたのは認知症の進行が激しい祖母の春枝と、中学生の孫・則雄。この辺までは正統派のホラー。ところがここで春枝が覚醒。前から家に住み着く霊のサユリが見えていた彼女は、則雄と共にサユリへの復讐を誓い、得意の太極拳も駆使して悪霊に立ち向かっていく。

 たばこをすぱすぱ吸い、髪形もレゲエ調にして、悪霊の前でも豪快に鍋を食らう春枝は、「生きている者の生命力の強さこそが、死んだ霊に対抗できる」と則雄に説き、霊を怖がらず、笑い飛ばして、心の弱さに付け込まれる隙をつくるなという。神の力を持ち出すオカルトホラーとは違い、生きる者のパワーを武器にするところが明快で面白い。

ホラー界でもシニアが活躍する時代に?

 この最強の祖母を演じているのが、根岸季衣。前半の家族との会話も成り立たない認知症の老婆から、後半は一転して則雄をリードして行動する、もはや復讐のためなら手段を選ばないパワフルなスーパーウーマンへと変身する。かつて、一気に5人を倒したこともある太極拳の達人という設定で、その形もぴたりと決まり、そのワイルドでアクティブなキャラクターが痛快。多面的なキャラクターを一人で演じ分けているあたり、根岸季衣は「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」のミシェル・ヨーの雰囲気さえ漂う快演。今年70歳を迎えた彼女だが、ある意味新たな代表作と言えるかもしれない。

 この春枝の存在を中心に、好きな同級生の女の子のためにもサユリと戦う闘志を燃やす、南出凌嘉演じる則雄には青春映画の一面もあり、さまざまな要素を盛り込んだお得な一本である。原作の押切蓮介は「霊に負けに負ける負け戦映画はもうこりごりだと思う人には是非観てほしい」とコメントを寄せているが、今年も地域社会の闇を描いた古川琴音主演の「みなに幸あれ」、渋谷凪咲主演の学園ホラー「あのコはだぁれ?」など、Jホラー作品はコンスタントに作られているが、かつての「リング」や「呪怨」シリーズのような、あるムーブメントを生み出す映画は見られない。白石監督は「停滞しているJホラーをブチ壊す、新時代のホラーを目指しました」と言っているが、その起爆剤になっているのがエネルギッシュなシニア世代というのがポイント。先ごろ90歳の草笛光子が主演した「九十歳。何がめでたい」が注目を浴びたが、ホラー界でもシニアが活躍する時代になるのか。

 今後の状況は未知数だが、「サユリ」は暑くてしょうがない夏の不快さを吹き飛ばす、拾い物の映画であることは間違いない。

(映画ライター・金澤誠)

  ◇  ◇  ◇

 怖いのになぜか見たくなるのがホラー作品。●関連記事【もっと読む】火付け役は貞子…社会現象になったホラー作品 ~「リング」「バトル・ロワイアル」~では、両作が社会に残した爪痕について伝えている。

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