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夫は家にいるのが好きな人…その家で自然体で死んでいければいい【老親・家族 在宅での看取り方】

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年8月21日 9時26分

夫は家にいるのが好きな人…その家で自然体で死んでいければいい【老親・家族 在宅での看取り方】

あくまでも自然体で…

「昨日血液を採ってもらって治療はお任せしますと言いましたが、苦しみをなくすような感じでいいので、改めて延命につながる治療はしない方向でお願いします」

 在宅医療を開始してしばらくしたある日、きっぱりと尊厳死の希望を口にしたのは、パーキンソン病を患う83歳の男性の奥さまでした。彼女はさらにこう続けました。

「こうなる前から、夫と私は話し合って尊厳死協会に入っていました。夫は家にいるのが好きな人で、その家で自然体で死んでいければいいやって思っています。ですからよろしくお願いします」

 パーキンソン病は、脳内にある神経伝達物質ドーパミンが不足することで、脳からの指令が全身に伝わらなくなる病気です。症状としては、表情が乏しくなる、手足が震えスムーズに動かせなくなるなどがあります。

 今のところ完全に治る治療法はありませんが、薬物療法によって症状を抑えることはできます。しかし、症状は数年かけて徐々に進行していき、厚労省が発表している生活機能障害度分類では、その重症度(Yahr・ヤール)は3段階あるとされています。

 まずYahr1は日常生活や通院時にほとんど介助がいらない。Yahr2は日常生活や通院に部分的な介助が必要になる。そしてYahr3は日常生活に全面的な介助が必要で、自分だけで歩いたり立ち上がったりできない状態です。この患者さんはYahr3で、自宅で寝たきりの生活を送っていらっしゃいます。

 在宅医療療養をされている患者さんの中には、無理な延命を拒否する方が珍しくありません。しかしこのご夫婦のように、日ごろから最期の迎え方についてまで話し合いをされている方はそうはいないのです。

「先生に来てもらってとても助かりました。ただ夫はパーキンソンであまり動けません。食べられないのではなく、食べる気がないんです」

 奥さまから伝えられる旦那さんについての鋭い考察に驚かされます。

 ちなみにこのご夫婦が加盟している尊厳死協会は、「自分の病気が治る見込みがなく死期が迫ってきたときに、延命治療を断るという、死のあり方を選ぶ権利を持ち、それを社会に認めてもらうために延命治療を断り、自分らしくあること」を目的とした団体です。そんな思いを持ち、自身の生き方を貫こうとされる方にとって、在宅医療は選択しやすいものなのかもしれません。

 私たちはしばしば、このご夫婦のように、病気や暮らしに向き合ったからこそ導かれたさまざまな生死観に触れることがあります。そんなとき、「暮らしの延長は人生で、人生の延長には死がある」のだと、医師として背筋の伸びる思いをするのでした。

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