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終わらないメダル狂騒曲…選手の頑張りを東京五輪汚職を洗い流す「メダルウォッシュ」にしてはいけない(春日良一)

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年8月23日 9時26分

終わらないメダル狂騒曲…選手の頑張りを東京五輪汚職を洗い流す「メダルウォッシュ」にしてはいけない(春日良一)

パリ五輪の日本選手団メダリストたちと記念撮影する岸田首相(C)共同通信社

【徹底!実践五輪批判】#17

 パリ五輪日本選手団の尾県団長が五輪最終日の総括会見で、「全力を出し尽くし、多くの人にオリンピックやスポーツの素晴らしさを伝えることを大きな目標としてきたが、その結果が一つ一つのメダルの積み重ねとなった。本当に選手たちが頑張ってくれたと思う」と語っていた。

 一聴すると、勝ち負けに関係なく奮闘し、懸命に戦うその姿を通してスポーツの魅力を伝えた選手たちの労をねぎらい、敬意を表す団長らしい言葉に聞こえる。

 メダルの数はあくまで、その結果だと。

 しかし一方で、尾県団長は五輪開幕前に、「金メダル20個、総数55個」とするメダル獲得目標を立て、それを公表している。そして、閉幕後にはメダリストだけを引き連れ、首相表敬に参じている。団長の本音は、メダルだけが万能だと思っているのではないか。せめて、メダル獲得目標を掲げていなければ、「スポーツの素晴らしさを伝えるために選手が頑張った結果の好成績」との言葉がすんなり胃の腑に落ちるところだったが、実際は、単なる予想でしかないメダル獲得目標数がバッチリ当たって大喜び、東京五輪汚職や札幌冬季五輪辞退を洗い流すメダルウオッシュが完成したと思っているのが透けて見えてしまうのだ。

 まさか、最近の選手団ではやっていないだろうが、かつては選手団本部室に大きな紙を貼り出して、金メダルから入賞者まで結果を書き込んでいた。そして、それを見ながら「あと3個だな」なんて役員がお茶を飲みながら、頑張って(!?)いた時代もある。そうしたメダル至上主義は基本的に変わっていない。

 パリ五輪が閉幕して2週間になろうとしているが、日本のメダル狂騒曲が終わらないのは、これが背景にある。

■テレビ中継には興ざめ

 もうひとつのメダル狂騒曲はテレビである。メダルというキーワードが視聴者との唯一の共通語だと錯覚しているとしか思えない。

 柔道混合団体戦決勝で、日本がフランスに勝ちを積み重ねると、「あと〇勝すれば日本は金メダルです」と言い続ける。こちらは試合展開や技の解説を聞きたい。マラソンでも男女それぞれ1人が入賞したが、メダル獲得可能性がありそうなうちは、「今の調子でいけばメダルも夢ではありません」と言い続ける。これでは視聴者にはメダルという言葉だけが耳に残り、その可能性がなくなった時点で興ざめということになりかねない。

 メダルというキーワードを除外して、「〇〇選手は先頭から何秒遅れ、〇〇位までには入れますね」というなら、まだ競技観戦自身を楽しもうという気にもなる。

 メダルという言葉を連発することでスポーツ自身の面白さを失う。今回のルートはパリならではの名所旧跡を通っているのに、その解説は一切ないという狂騒ぶりだった。

 メダル以外のオリンピックの価値に心を向けなければ、日本のスポーツはいつまで経っても昭和のままだ。

(春日良一/五輪アナリスト)

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