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文化財候補「昭和の名建築」を次々解体する愚かさ…大正11年創建「虎に翼」ロケ地には8万人来館

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年8月25日 9時26分

文化財候補「昭和の名建築」を次々解体する愚かさ…大正11年創建「虎に翼」ロケ地には8万人来館

名古屋市政資料館は「虎に翼」戦前の東京編で東京地裁として使われた(C)日刊ゲンダイ

 昭和の「寅」はフーテン、令和は女性裁判官──。100年前から時代の変化を見てきた名古屋の建築物が人気だ。1922(大正11)年創建の市政資料館。外観はネオ・バロック様式のレンガ造りで、NHK朝ドラ「虎に翼」のロケ地になるや、来館者が急増した。

 その数は放送開始の4月から今月20日までに8万444人。過去最多だった前年同期の約2.5倍だ。記者が訪れた平日昼も人はひっきりなし。「今までにない反響です」と資料館の担当者はこう語る。

「当初は特に告知をしていませんでしたが、ロケ地と聞きつけた方が次々と現れ、朝ドラの影響力を思い知りました」

 もともとは名古屋地方・高等裁判所。ドラマでは戦前の東京編で東京地裁として使われた。主人公の寅子たちが中央階段を行き来するシーンを覚えている視聴者も多いはずだ。

「主人公のモデル、女性初の裁判官の三淵嘉子さんも52年から3年5カ月、この場所で働いていました。来館者の要望に応え、今月25日まで三淵さんの企画展を開催。ドラマを機に建物の魅力を知って欲しい」(担当者)

 かつて消滅の危機に陥っていた。79年に裁判所が新庁舎に移転。取り壊しをして公園にする計画が浮上すると、市民から「残して欲しい」との声が上がり、市職員も保存に動き、84年には国の重要文化財に指定。3年半の復元工事を経て89年から市の公文書館として今なお姿をとどめている。

 創建時はまさか「100年先」に朝ドラの“聖地”と化すとは、予想だにしなかっただろう。

「建築物は時間と共に文化的価値が増し、その価値はお金では買えません。まだ明治・大正期の建物の価値は認められていますが、昭和の高度成長期の名建築を保存する動きは鈍い。都内でも芦原義信氏のソニービル(66年)、黒川紀章氏の中銀カプセルタワービル(72年)、林昌二氏の中野サンプラザ(73年)などが消え、香川にある丹下健三氏の船の体育館(64年)も解体が決まっています。建築後100年なら残し、50~60年の“若い芽”を摘むのは、将来の文化財候補を破壊するも同然。未来へのおごりです」(建築エコノミスト・森山高至氏)

 寅さんがいた昭和の名建築を「覚えているかな? 知らねえけれど」100年先も残す。それが令和の課題である。

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