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静岡県の航空会社「フジドリームエアラインズ」に吹いた“神風” 地元の老舗・鈴与が親会社(真保紀一郎)

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年8月28日 9時26分

静岡県の航空会社「フジドリームエアラインズ」に吹いた“神風” 地元の老舗・鈴与が親会社(真保紀一郎)

拠点は静岡空港(C)共同通信社

【企業深層研究】フジドリームエアラインズ(上)

 FDA? かつてプロ野球にFDH(福岡ダイエーホークス)はあったが──。

 航空ファンや静岡県人ならかなりの確率で答えられるかもしれないが、一般的な知名度はそれほどない。FDAの正式名称は「フジドリームエアラインズ」。フジは富士山のフジ。その名からもわかるように、静岡県に本社を置く航空会社だ。

 会社誕生は2008年。鈴与の完全子会社として設立された。

 鈴与といっても首都圏の人間にはあまり馴染みがないかもしれない。しかし、クジラがジャンプする映像を背景に「♪見たこともないもの 見てみたーいなー クジラのダンス 北の国のオーロラ ありんこの涙 いーつかきっと見れるよね」と歌うCMを見たことがある人は多いはずだ。

 鈴与は静岡県に本社を置く物流会社。1801年に創業した廻船問屋がルーツで、今では物流だけでなく、エネルギーや食品、情報、教育など幅広い事業を手掛けている。同族会社で、経営トップは歴代「鈴木与平」を名乗っており、現在の会長が8代目・鈴木与平だ。

 静岡に生まれ静岡に育てられた会社だけに、地元愛は極めて強い。FDAを立ち上げたのも、その地元愛があったからこそだ。

 09年、静岡県牧之原市と島田市にまたがる形で静岡空港が開港した。離島を除けば日本で最も新しい空港だ。空港建設が決定したのはバブル真っ最中の1987年。しかし工事が始まった96年にはすでにバブルは崩壊しており、2000年代に入ると、「開港しても就航する航空会社はない」との声が高まっていた。

 そこで鈴与の出番である。静岡県に初めてできた空港を生かすために自ら航空会社を設立、こうしてFDAは静岡空港を拠点に全国の地方空港を結ぶリージョナル航空会社として産声を上げた。

 当然、その経緯からして経営的には厳しく、赤字が続いていたが、2つの神風が吹いた。

 1つは、JALの経営破綻だ。これにより、多くのパイロット、CAが人員削減の憂き目に遭ったが、FDAはその受け皿となった。さらにはJALグループのジェイエアがリージョナル路線から撤退、FDAはそれを引き継いだ。航空会社が利益を出すには効率的なダイヤ運航が不可欠だが、そのためにはある程度の機数・便数が必要だ。そして当然、搭乗員も確保しなければならない。それをJALが提供してくれた。

■全国各地の空港ではグラハン要員が不足

 もう1つがグランドハンドリング(地上支援業務)の人員だ。いま全国の空港でグラハン要員が不足、そのため離着陸数を増やせない。ところが、静岡空港には余裕があった。そこで10年代に入ると中国人インバウンドを乗せた中国機が続々と静岡空港を利用した。そのため同空港は、瞬く間に国際便が最も発着するローカル空港となり、FDAの搭乗者もそれに伴い増えていった。

 この神風により、FDAは16年3月期に初の黒字を計上。就航から7年後の快挙だった。黒字はそこから4期続いたが、そこをコロナ禍が襲った。FDAの客が消えた。=つづく

(真保紀一郎/経済ジャーナリスト)

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