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前頭側頭型認知症のリハビリではスケジュールが重要なのはなぜか?【正解のリハビリ、最善の介護】

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年8月28日 9時26分

前頭側頭型認知症のリハビリではスケジュールが重要なのはなぜか?【正解のリハビリ、最善の介護】

ねりま健育会病院の酒向正春院長(C)日刊ゲンダイ

【正解のリハビリ、最善の介護】#43

 認知症の中等症リハでは、施設でも自宅でも、1日単位のスケジュールと1週間単位のスケジュールをきちんと決めることが大切だと前回お話ししました。決まった時間にどこに行くのか、何をするのかといったスケジュールが決まっていると、「今日やることがある=自分の役割がある」といった自己効力感を維持することにつながり、不安の軽減や認知機能低下の進行を抑制するのです。

 中でも、「前頭側頭型認知症」の患者さんは、本人の中で「決まった時間に決まった行動をする」という特徴があり、本人の生活パターンを考慮せず無理にリハビリをやらせようとすると、トラブルが起こります。そのため、その患者さんはいつどんな行動をするのかを把握したうえで、その行為をリハビリに組み込まなければうまくいかないのです。

 一口に認知症といっても、いくつか種類があります。脳の変性による認知症には、70%を占めるアルツハイマー型認知症以外にも、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、血管性認知症などが挙げられます。記憶障害が生じる点は共通していますが、ほかに現れやすい症状が異なるため、それぞれに応じた治療とリハビリが必要になります。今回は前頭側頭型認知症についてお話しします。

 前頭側頭型認知症とは、理性や感情をコントロールする脳の前頭葉と側頭葉が萎縮して神経変性を来すため、社会性が欠如して万引や信号無視といった行動を起こしやすくなったり、先ほど触れたように同じ時間に同じ行動を繰り返す常同行動が見られる傾向があります。

■決まっている行動パターンに沿ってリハビリ時間を組み込む

 また、前頭側頭型認知症の患者さんは、すべてに無関心になって動かなくなるような陰性症状がほとんど見られず、嫌なことには興奮して暴力的になったり暴言を吐く攻撃的な陽性症状が多く現れます。そのため、薬で認知症を治療する際に運動機能や精神機能をアップさせる抗認知症薬を当たり前に使うと、より興奮しやすくなって症状が悪化してしまいます。興奮を抑える抗精神薬や漢方薬を使ってコントロールする治療が基本です。

 そのうえで、本人の中で決まっている行動パターンに沿って、リハビリ時間を組み込んでいきます。朝は起きて、夜は眠るよう生活パターンを整え、筋力と体力や覚醒を維持するために、「座らせる」「立たせる」「歩かせる」「コミュニケーションをとる」ことを続けながら、本人が楽しいと感じる取り組みを継続していってもらいます。前回もお話ししたように、読書でも塗り絵でも習字でも手芸でも、楽しいと感じながらできることを繰り返し続けるのです。これによって、本人が自分でできることが増えて、介護者の介助量を減らすことにつながります。

 ただ、前述したように前頭側頭型認知症の患者さんの場合、本人が“動く”時間帯にこれらのリハビリを実施するスケジュールを組まなければなりません。こちらの都合で、本人がやりたくない時間にやらせようとすると、暴れて暴力を振るったりするなどのトラブルが発生する危険があるのです。

 このように、認知症のリハビリでは、まずきちんと認知症の病型を知ったうえでアプローチすることが大切になります。アルツハイマー型やレビー小体型もやはりそれぞれ特徴があります。次回、詳しくお話しします。

(酒向正春/ねりま健育会病院院長)

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