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自分の意思に基づき自分のペースで…在宅医療の最大のメリット【老親・家族 在宅での看取り方】

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年8月28日 9時26分

自分の意思に基づき自分のペースで…在宅医療の最大のメリット【老親・家族 在宅での看取り方】

写真はイメージ(C)iStock

【老親・家族 在宅での看取り方】#108

 訪問診療の最大のメリットはなにかといえば、それは患者さんが自らの意思に基づき患者さんのペースで治療が行えるということです。

 例えば急に痛みが強くなり痛み止めの麻薬を使用したいと思った場合に、病院ならまず、ナースコールをして看護師に来てもらい、麻薬を使用するまで管理の都合上、ナースのダブルチェックが必要となります。そうやってようやく服薬となるため、この間30分ほどの時間がかかることも珍しくありません。

 しかし在宅医療では、すでに処方され枕元にある薬を、ご自身の判断で服用できます。もし服用してよいか迷った時も24時間365日いつでも連絡でき、適切な案内のもと安心して服用いただけます。

 この24時間連絡をとれ、患者さんの悩みにすぐ解決策を提案できることは、在宅医療の強みなのです。

 ですが時にパニックになって、連絡をくださる患者さんも多数います。そのような時はゆっくりとお話を伺い、お手持ちの薬の特性や量を確認し、適切な服用や、場合によっては在宅酸素の流量を上げるなどといったことまで提案するのです。

 不安神経症の患者さんで当院に度々電話をかけてこられる方がいます。

「もう流してしまったからわからないけど、便に血が混ざっていたかもしれない! どうしたらいいですか!!」

「今日17時までに2000ミリリットル近く水分を取ったんだけど 15時半くらいまでにバルーンに1500ミリリットルくらいおしっこが出てるの(注:バルーン=排尿に関する病気がある方が、カテーテルを挿入し排尿を補助する装置)。多くてびっくりしてしまって電話したんです。ひとまずお水をいっぱい取ってねって言われたんだけど、私の腎臓がもっと悪くなったら透析だよって言われてるのね。でもお金もないし、入院も透析もしたくない気持ちなんです。だから心配で心配で」

 というように不安になった気持ちを訴えられます。ですが、そういった不安な気持ちを口にすることは気持ちの整理になり、そのタイミングで我々が行う医療的なアドバイスの理解も深まりやすくなるということもあります。

 訪問診療では、薬局の薬剤師が処方箋に基づいて調剤した薬をご自宅に届ける「薬剤師訪問サービス」も利用します。

「何回も何回も契約させられて詐欺みたい。だから訪問薬局は契約したくない」と、漠然とした不信感からこのサービスを拒否された患者さんには、義理の兄弟にご協力いただき、薬を薬局まで取りに行ってもらっていました。それが無理な場合は、善意で薬局が届けることもあったようです。

 訪問診療は、医療従事者の善意や我慢により成り立っている部分も少なからずあります。高齢多死化を迎える現代にあって、「電話だけで対応できない患者さんに対し、どのような解決策を提案できるのか」や「国の診療報酬改定や介護報酬改定などで収支が変わり、構造的に安定しない脆弱な現状」など、将来においてさまざまな不安を抱えています。

 いずれにせよ、患者さんが安心して療養を行え、かつ、医療従事者が十分に生活できる環境の構築が急務だと考えるのです。

(下山祐人/あけぼの診療所院長)

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