1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

親として子供にどう「性」を伝えるべきか? 性教育に力を入れる医師に聞いた

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年8月28日 9時26分

親として子供にどう「性」を伝えるべきか? 性教育に力を入れる医師に聞いた

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 高校生に向けて性教育を行う男子高校生3人の団体セクテル。8月20日発売の本欄で取り上げたが、彼らが活動を起こすきっかけとなったのが岩室紳也医師の講演だ。「性教育の授業というと気詰まりで、情報が古く、プリントの穴埋め的。しかし岩室先生の話は失敗談を織り交ぜたエピソードで、知識を伝えるというより、性について考えようというものだった。独り占めするのはもったいない。思ったより知らないことがたくさんある性教育を広めたい」(セクテル) 

 そう彼らに言わしめる岩室医師の性教育とは?

■「正解依存症」から脱却せよ

 岩室医師が、挙げたのが「正解依存症」という言葉だ。

「親としてどう性教育を行うべきかとよく聞かれます。親は子供に対して、正解以外のことを伝えられません。例えば、『酔っぱらってコンドームなしに寝ちゃって、妊娠して中絶せざるを得ないことがあった』なんて話はできませんよね。子供たちが聞きたいのは失敗の話。そこからイメージして、自分ならどうかを考える。また、失敗を許容する社会にもしていかなくてはなりません。その裏返しが、自分なりの正解を疑うことなく押し付ける『正解依存症』。正解を並べても、聞いた人の心には残らない」

 とはいえ岩室医師も、性教育の講演を始めた当初、正解を並べていたという。

「HIV/AIDSの普及啓発ということもあり、『エイズウイルスに感染しないためにはノーセックスかコンドーム』と伝え続けていました。科学的には正しい内容ではありますが、しかし、結果的にエイズウイルスに感染した人は私のその話を聞いて、私の外来を受診しようと思うか。『正解を聞いていたのに自分は守れなかった』と外来を受診できないのではないか。そもそも正解を並べても、『そうですよね』となるだけで、伝わらない。私自身も、講演の中で正解を押し付ける正解依存症だったと思い知らされたのです」

 良いか・悪いかではなく、岩室医師が患者や友人・知人との交流の中で得たエピソードを講演で淡々と伝えていく。それらを通して「究極の目的」としているのが、「一人一人が自分らしく生きられる。失敗しても、自分らしく生きられる」というメッセージを伝えること。

■「理解」より「認める」

「私がHIV/AIDSに関わり始めた頃、ゲイの友人から突然カミングアウトされ、思わず『なんでゲイなの?』と聞いてしまったんです。すると『岩室さんはなぜ女が好きなの?』と問い返され、答えられなかった。自分がなぜ異性愛者かすら説明できず、理解できないのに、性的指向が異なる人を理解するのは無理。世の中にはいろんな価値観や経験、生き方がある。『理解する』という上から目線ではなく、理解できなくても多様性を認めていく。性感染症の話などは結果としてついてくるもので、『自分らしく生きる』ことを伝えるのが性教育だと考えています」

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください