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地元企業の夢が結実したが…静岡県の航空会社フジドリームエアラインズには課題山積

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年8月29日 9時26分

地元企業の夢が結実したが…静岡県の航空会社フジドリームエアラインズには課題山積

FDAが11年ぶりにCA制服を刷新、披露する客室乗務員ら(C)共同通信社

【企業深層研究】フジドリームエアラインズ(下)

 静岡空港を拠点に、全国ローカル空港を結ぶリージョナル航空、フジドリームエアラインズ(FDA)。2009年の初就航から赤字が続いていたが、JALからローカル路線を引き継いだこと、そして静岡空港に中国インバウンド機が大量に発着したことで業績が改善。2016年3月期からは黒字基調となった。

 しかしコロナ禍には手も足も出なかった。主要都市を結ぶ路線でも空席だらけになったのだから、地方を結ぶFDAの被害はさらに甚大で、減便や値下げをしたものの、20年度の搭乗率は40%を切った。当然ながら大幅赤字を計上した。

 今では日常が戻り、人の移動も復活、ANAやJALなど大手航空会社は業績を急回復させている。搭乗率も、羽田便などはコロナ前を超えた。

 ところがFDAにはいまだ客が戻らない。例えば今年のゴールデンウイークの搭乗者数は5万3094人で前年比86.8%。搭乗率は67.0%で前年より9.2ポイント悪化した。コロナ前の19年の搭乗者数は6万1897人で、それと比較すると14.2%減。しかも19年の搭乗率は90.5%だった。

 FDAの搭乗率の損益分岐点は約70%といわれている。にもかかわらず書き入れ時のゴールデンウイークでさえ、その水準に届いていない。黒字回復への道はまだ遠い。

 大手航空会社が好調なのは、個人客に先駆けてビジネス客が戻ってきたためだ。

 ところがFDAは羽田空港も関西空港にも発着枠を持たない。そのためビジネス客ニーズはもともとなかった。そして個人客の戻りはビジネス客に比べまだ途上だ。

 さらに言えば、一般的に航空会社には羽田-新千歳などのドル箱路線があり、収益を支えている。FDAにはそれもない。FDAの最大の弱点だ。

 幸い、親会社の鈴与の業績は好調だ。しかも鈴与は同族の未上場会社のため、不採算部門を切り捨てろと迫る物言う株主もいない。その意味ではFDAがすぐに危機を迎えるわけではない。

 しかしこのままでいいはずもない。そこでFDAが今力を入れているのが定期路線ではなくチャーター便。例えば夏は、稚内と全国のローカル空港を結ぶチャーター便は人気を集める。

 しかも競合がないので収益率は高い。今夏は昨年より6割以上多いチャーター便を予定しており、それにより収益を伸ばすという。

 そしてもう一つがコードシェア便の拡充だ。FDAはJALから路線を引き継いだこともあり、すでにコードシェアを行っている。そして昨年、鈴与グループがANAと関係が深いスカイマークの筆頭株主になった。これにより接点が生まれ、すでに乗継便などでの提携が決まっている。

 大手航空会社にとって、ローカル線は収益を上げにくい。それを専業航空会社と組むことでウィンウィンの関係を築こうとしている。

 これが実れば、FDAの集客力や生産性は大きく向上する。

 FDAは、地方を元気にしたいという、地方企業の夢が結実した会社だ。その一方で現実は厳しい。

 夢が現実を乗り越えることができるか、正念場を迎えている。

(真保紀一郎/経済ジャーナリスト)

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