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世界初の週1回持続型インスリン注射は糖尿病患者にどんな変化をもたらす?

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年8月29日 9時26分

世界初の週1回持続型インスリン注射は糖尿病患者にどんな変化をもたらす?

写真はイメージ(C)iStock

 世界で初めて、週1回の皮下注射でインスリンの基礎分泌を補う超長時間作用のインスリン製剤が年内にも登場するという。どのような薬で、どんな人にメリットがあるのか? 糖尿病専門医で「しんクリニック」(東京・蒲田)の辛浩基院長に話を聞いた。

 現在使用されているインスリンは作用時間の違いにより2種類に分かれる。食事による血糖上昇を抑える「速効型」と、一日を通して長時間血糖を安定させる「持続型」だ。これまでの持続型は長くても36時間程度で、患者は1日1回か2回注射する必要があった。

 しかし、今年5月31日の厚労省薬事審議会・医薬品第一部会で承認され、年内の発売が期待される新インスリン「イコデク」(商品名:アウィクリ)は、作用時間が大幅に延び、1週間に1度の注射が可能になるという。

「1型はもちろん、仕事や在宅療養中で毎日の注射が難しい重度の2型糖尿病の患者さんなどに朗報です。とくに日本では糖尿病を抱え、認知症も併発している高齢者は増加する一方。毎日1回もしくは2回の基礎分泌を補うためのインスリン注射をサポートするのは家族や介護士、それに医療従事者にとって大仕事です。なかには必要な注射を十分行えず、血糖コントロールが十分できないケースもあります。週1回インスリン注射の登場は、これらの患者さんの治療負担感を軽減させ、生活の質の向上につながるうえ、治療の質もアップすると考えられます」

■効果と安全性に問題なし

 新たなインスリン注射薬は病状の軽い糖尿病患者にもメリットをもたらす可能性があるという。

「糖尿病が疑われながら治療しない人、治療しているのに血糖コントロールがうまくいかない人の中には、毎日のインスリン注射の煩雑さをイメージして、治療を忌避する人が少なくありません。しかし、高血糖が続く人の膵臓はインスリンを分泌させるために無理やり働き続けている状態です。その結果、徐々にインスリン分泌量は少なくなり、やがてまったく出なくなる。ですからインスリン分泌量が少ない人は早い段階から持続型インスリン注射を行った方がいい場合が少なくありません。膵臓の負担が軽くなり、その働きを回復させれば、経口血糖降下薬だけとなる場合もあるのです」

 気になる効果と安全性はどうか?

 今回の承認申請につながった第3相試験「ONWARDS試験」は、1型と2型糖尿病患者4000人以上が参加した6つの臨床試験から構成されている。うち4つの試験には400人以上の日本人患者が参加している。

「例えばONWARDS1試験では、インスリン初心者の2型糖尿病患者984人を対象に78週間投与でのイコデクと従来型のインスリングラルギンを比較したところ、52週間後のヘモグロビンA1c低下は、グラルギン群よりもイコデク群で大きく、有意差が見られました。また、目標血糖範囲に収まる時間は長く、低血糖リスクも両群に差がないと報告されています。他のONWARDS試験では糖尿病治療中の患者さんなどを対象にグラルギンとの比較を行い、効果・安全性に問題がないことが示されています」

 週1回の注射薬といえば、最近血糖を下げるだけでなく体重減も期待できるGLP-1受容体作動薬(商品名:トルリシティ、オゼンピック)、GIP/GLP-1受容体作動薬(マンジャロ)が発売され、人気になっている。

 新たな週1インスリン注射薬の登場は糖尿病治療をさらに前進させることになりそうだ。

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