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「ラブドール」のオリエント工業が事業終了…“生みの親”土屋日出夫代表の熱い思い(小林佳樹)

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年8月31日 9時26分

「ラブドール」のオリエント工業が事業終了…“生みの親”土屋日出夫代表の熱い思い(小林佳樹)

オリエント工業のHPから

【経済ニュースの核心】

 唐突な発表だった。日本のラブドールメーカー「オリエント工業」(東京都台東区)が8月21日、公式ウェブサイトで事業終了を発表した。

「創業者であり、長年にわたり会社を牽引してまいりましたオリエント工業の代表『土屋日出夫』が、体調を優先することを決断し引退を決定いたしました。(中略)代表の健康状態を考慮し彼の願いを尊重するため、会社としても事業を終了することとなりました」(オリエント工業HPから)というのが理由だ。上野ギャラリー&ショールームは9月20日、工場の営業も10月20日で終了するという。上野ショールームは8月1日に、ギャラリー&ショールームへとリニューアルオープンしたばかりだった。その突然の事業終了に、ファンの落胆は大きい。

 オリエント工業は、1977年に特殊ボディーメーカーとして、土屋日出夫氏が創業した。土屋氏は当初、東京都台東区上野、浅草でアダルトショップを経営していたが、当時のダッチワイフがあまりにも粗悪で、改良が必要との問題意識から製造に乗り出したとされる。

 念頭にあったのは障害者への思いだった。親交のあった脳神経科医から「障害者が実際の性行為を行うこともままならぬ状況におかれ、難儀している」という実情を知らされたことが起業の動機だった。このため開業当時は障害者へ向けての販売しか行っておらず、通信販売時にも障害者手帳の写し提示を必要としていた。障害者については、性処理相談や10%の障害者割引制度などで支援を行っていた。その後、「高齢者」「独身男性」など徐々に購入できる対象を広げていった。

 ラブドールはソフトビニール製だけでなく、近年はシリコーンを使うことで、透明感のあるヒトの肌の再現を実現している。「まるで生きている女性そのもの」と内外で高く評価されており、そのリアリティーの高さからショールームへの搬入時に死体と間違われて、警察に踏み込まれたこともあるほどだ。

 購入は原則として通信販売だが、台東区上野のショールームでは、直接納品後に持ち帰ることも可能だ。不要になった際は、オリエント工業に郵送すれば「里帰り」として引き取り、人形供養もしてくれる。

 漫画家・イラストレーターのみうらじゅん氏もラブドールの愛好者で、10年ほど前に、リリー・フランキー氏とともにオリエント工業のショールームを訪ね、ラブドール「絵梨花さん」を購入、事務所の秘書として可愛がっている。

■「心の安らぎ」を得られる女性像の開発

 土屋氏は会社の理念について、「創業当時より目指していたのは、常にかたわらに寄り添って心を和ませてくれるような、『心の安らぎ』を得られる女性像の開発でした。大切なことは、性処理だけが目的の単なる『ダッチワイフ』ではなく、人と相対し関わり合いを持つことができる『ラブドール』を創ることでした。中には何らかの事情で性的な重荷をお持ちの方々に、精神的、肉体的な充実感を持っていただけるようお手伝いをさせていただく事もありました」と熱く語っていた。単なる風俗産業ではなく、社会的にも意義深い企業なだけに惜しまれる事業終了だ。

(小林佳樹/金融ジャーナリスト)

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